IT人材の人手不足が続いている。リクルートキャリアの2018年1月15日付の発表によると、2017年12月時点でITエンジニアの転職求人倍率は4.01倍。「記録を遡れる2008年10月以降で過去最高」(リクルートキャリア広報)に達した。ここまで来ると、需要を国内だけで満たすのは難しい。海外企業に開発業務を委託するオフショア開発の重要性が増す。

 ただ、開発現場に取材をしていると、オフショア開発に苦労しているという声をよく聞く。「日本人は行間を読み、外国人は行間を読まない。だからオフショアは難しい」とよく言われるが、インドIT大手インフォシスの日本法人でシニア・プロジェクト・マネジャーを務めるアルムガム・ヴァリナヤガム氏はこうした意見に異を唱える。

インフォシス日本法人のアルムガム・ヴァリナヤガム シニア・プロジェクト・マネジャー
[画像のクリックで拡大表示]

 インドで9年間、日本で14年間のシステム開発経験を持ち、オフショア開発案件を多数手掛けるヴァリナヤガム氏は「日本側のプロジェクトマネジャーに説明力が不足しているのではないか」と問題提起する。ここでいう説明力は大きく2つ。1つは「オフショア側に対して伝える内容」、もう1つは「伝え方」だ。

背景や目的、全体像も伝える

 まず、1つめの「オフショア側に対して伝える内容」が足りず、情報不足による見当違いの開発をしてしまうケースが多いと指摘する。その結果、結合テストの段階で想定と異なる仕様になっていると気付いたりする。

 よくある失敗は次のようなケースだ。システムをいくつかのサブシステムや工程に分割して、特定のサブシステムの開発または工程をオフショア拠点に依頼するとする。その際、失敗プロジェクトでは「オフショア側に任せる部分に限定した、技術的な要件しか伝えない」(ヴァリナヤガム氏)。成果物が完成した後で「想定と実装が違う。品質が悪い」と大騒ぎになる。

 ヴァリナヤガム氏は「技術的な要件に加えて、その要件が生じた背景、プロジェクトの目的、システムの全体像、全体から見てオフショア側に任せる部分がどう位置付けられるかを伝える必要がある」と話す。プロジェクト中に変化があれば、情報を逐次共有する。開発者は伝えられていない情報を考慮しようがない。考慮してほしい情報は明確に分かりやすく伝えるべきと主張する。

 プロジェクトメンバーでゴールと情報を共有する取り組みは、プロジェクトを成功させる第1歩だ。プロジェクトマネジメントの解説記事を読めば、必ず書かれているような基本中の基本でもある。しかし「物理的な距離に加え、国や言語の違いによる心理的な距離もあり、オフショア拠点がプロジェクト体制の一部という感覚が薄れやすいのではないか」(ヴァリナヤガム氏)。

 同じプロジェクトルームで仕事をしていれば「漏れ伝え聞く情報」があるかもしれない。しかし、遠隔地で働くメンバーはそうした情報を得られない。オフショア側の作業が動き出す前に、開発に当たって知っておいてほしい情報を意識して伝える必要がある。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)は12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら