「亡くなった方がいましてね。毎年必ずお参りに行っています」

 10年前、製造業の情報システム責任者2人と話をしていた際、片方の責任者がこうつぶやいた。その企業は基幹システムの全面再構築に成功したが、プロジェクトの途中でメンバーを失ったという。

 「御社もそうでしたか。うちも同じです」

 それを聞いたもう1人の責任者の答えである。こちらも基幹システムの再構築をしている最中に亡くなった方がいたそうだ。

 「おかげさまでシステムはしっかり動いていますが、忘れるわけにはいきません」

 「仰る通りです」

 このやり取りをしていた2人の責任者の表情は忘れられない。亡くなった方の立場や人数の話もその場で出たが割愛する。

 2人をお呼びしたのは、長年使ってきた基幹システムを全面再構築するプロジェクトをどのように乗り切り、何を学んだか、語り合ってもらうためだった。意見交換が一段落したとき、片方の責任者が突然、冒頭の話を始めたのである。

 どちらのプロジェクトも開発するソフトウエアの規模が大きく、数年がかりで実施された。予定していた時期に新システムを動かしており、いわゆる「動かないコンピュータ」(計画通りに動かせなかったプロジェクト)ではなかった。とはいえ集められた開発者は1000人を超えていたはずで、それだけの人数がいると心身の調子を崩す人がどうしても出てきてしまう。

 こうしたことは両社に限らず、どの企業でも、どんな業種業界においても起こり得る。まして動かないコンピュータの状態に陥ったら、離脱する人の数はさらに増える。

眠らない、眠れないのは危険

 10年前のことを思い出したのは、動かないコンピュータになりかけた大型プロジェクトについて一文を書いたからである。『奇跡が起きるか、電力自由化のシステム準備』という題名を付け、日経ビジネスオンラインで本日公開した。その中のくだりを引用する。

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