人工知能(AI)を応用したITツールを、働き方改革のために導入するユーザー企業が増えてきた。その現場を取材すると、当初の見込み通りの成果を得られずに試行錯誤しているケースが少なくない。しかもこの傾向は、本格活用を目指している企業ほど強いとも感じる。

 それでも、このような試行錯誤は決して無駄ではないと筆者は考える。机上での検討や実証実験だけでは気付かない、働き方改革で大きな成果を生み出す「鉱脈」を発見しやすくなるからだ。

 最近取材したサッポロホールディングスも、そんな鉱脈を探り当てた1社である。同社は間接業務の効率化を推進する目的で、野村総合研究所のAIシステム「TRAINA(トレイナ)」を導入。第1弾として、間接部門機能を担うグループ会社のサッポログループマネジメントでの実運用を2017年11月に開始した。

AIチャットボットの利用画面
(出所:サッポログループマネジメント)
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 従来は人手を介して電話やメールで応対していた社内からの問い合わせの一部を、TRAINAで代替する。具体的には、TRAINAが備えるAIチャットボットやデータ検索機能などを活用。これらとサッポログループマネジメントが運用するFAQシステムのデータと組み合わせ、問い合わせに対する回答をAIチャットボット経由でユーザーに案内する。

 この仕組みによって、人手で問い合わせに応じて回答を探し出す時間を削減し、間接部門の働き方改革につなげる。ユーザーにとっても、問い合わせてから回答を得るまでの時間の短縮が期待できる。

 実運用に先立って2017年3~4月に取り組んだ実証実験では、ユーザーからの問い合わせ内容の45%はAIで代替できるという結果が出ていた。

「日当はいくら?」など素朴な問い合わせが急増

 実運用の開始からおよそ2カ月が経過し、約100人のユーザーがAIチャットボットに質問した回数は1000件に達した。順調に利用が進みつつある一方、問い合わせに正しく回答できた割合は、45%をAIで代替するという見込みにはまだ及んでいない。「実験段階では見えなかった課題がいくつか明らかになったため」とサッポログループマネジメントの河本英則グループIT統括部営業情報グループ課長代理は打ち明ける。

サッポログループマネジメントの河本英則氏
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 特に河本氏にとって意外だったのは、FAQシステムで回答できない問い合わせが実証実験のときよりも大幅に増えたこと。「人にはわざわざ問い合わせないような、素朴な質問が増えた」と河本氏は話す。

 素朴な質問とは、例えば社内規定集に記載されているような事項を確認するもの。出張手続きであれば、「日当はいくら?」といったものだ。ユーザーも社内規定集に掲載されていることは理解しており、従来は間接部門にわざわざ問い合わせなかった。質問を受けないので、FAQシステムにも回答を用意していなかった。

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