最近、SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)という用語を目にすることが多くなった。ソフトウエアでネットワークの構成や設定を動的に集中制御するSDNを広域ネットワークに適用するもの。現在、SD-WANの機器/サービスを提供するベンダーや通信事業者がうたっているメリットはあまり魅力的とは言えない。SD-WANが本領を発揮すべきは企業ネットの多目的化だ。

 SD-WANのベンダーには、米ヴィプテラ(Viptela)やNECなどがある。ヴィプテラは2012年にカリフォルニアで設立された新興企業だ。SDNコントローラーの「vSmart」や、各拠点で各種回線を終端してデータ転送を司る専用装置の「vEdge」などで構成する。vEdge間はIPsecで相互接続され広域オーバーレイネットワークを作る。その上でセグメントの分割やQoSの設定を容易かつ柔軟にできる。

 第一のメリットが、高品質・高価格な通信事業者の回線と安価なインターネット回線をvEdgeで併用することによる回線の有効利用だ。帯域幅の確保や低遅延といった高いQoSが必要なビデオ会議や音声通話は高品質な回線へ、メールやWeb閲覧などベストエフォートで済ませられるアプリケーションはインターネット回線へと使い分けができる。

写真1●「OpenFlow」を実装した世界初のスイッチ
出所:ITpro
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 NECは2011年4月に世界初のSDN製品(写真1)を出荷しており、SD-LANで多くの実績がある。SD-WANの導入効果としてはヴィプテラと同様に、WAN回線の効率的利用を一番に挙げている。例えばデータセンターと拠点間のトラフィックを広域イーサネットとインターネットVPN間で分散させ回線の利用効率を高める。SDNコントローラーからの一括設定で負荷分散の修正ができる。このほか、Windowsアップデートの通信を制御して業務通信への影響を軽減したり、AWS(Amazon Web Services)導入時のネットワーク設定作業を削減したりできる。

 通信事業者としてはNTTコミュニケーションズがSD-WANサービスの概要を2016年10月に発表した。その機能には大きく制御機能と集中管理がある。制御機能で実現するのがマルチパス最適化である。ヴィプテラやNECと同様、複数の回線にトラフィックを負荷分散させ経済的に帯域幅を増加させる。集中管理としては現地での設定作業を不要にするゼロタッチプロビジョニングや、輻輳などを検知して動的に経路を最適化する。

 このようにベンダーや通信事業者が掲げるSD-WANの導入効果は共通している。しかし、拠点で広域イーサとフレッツを併用してトラフィックを分散させる手法はポリシールーティングと呼ばれ、目新しいものではない。SD-WANではそれがより簡単にきめ細かくできるかもしれないが、2本の回線を使うことに変わりはなく回線費用の削減は望めない。

 集中管理による設定の効率化も効果は限定的となる。データセンターLANなどと違ってWANではネットワーク変更の頻度がごく少ないからだ。銀行や流通業の店舗にWANを開通させた後、拠点の機器(ルーター)で設定変更が必要になることはまれである。

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