決算説明会に臨んだソフトバンクグループの孫正義社長
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 ソフトバンクグループは2016年11月7日、2016年4~9月期決算を発表した。売上高が前年同期比0.2%減の4兆2718億3400円、営業利益が同3.5%増の6539億4400万円の減収増益だった。円高の影響により米スプリントの売上高が円換算で縮小して減収となったものの、ドル換算では増収。日米ともに通信事業が堅調に伸び、底堅く増益を達成した。純利益は同79.6%増の7662億4900万円だった。

 決算説明会に臨んだ孫正義社長が最も多くの時間を割いたのは、英ARMホールディングス買収に代表される技術革新に対する投資戦略だ。冒頭から「最近は保守的に小さく固まってきたと、反省している。これほどテクノロジーの進化とパラダイムシフトが起きてるのに、目の前の日常業務に忙殺されてたと」と自らの経営姿勢に対する反省の弁を述べた。

 そのうえで英ARMホールディングスの買収や、先端技術分野に投資する1000億ドル(約10兆円)規模の私募ファンド「Softbank Vision Fund」を組成する狙いを説明。「今回の10兆円のファンドは(新しい投資戦略の)第1弾、あくまで入り口だと“おおぼら”を吹いておく」と語るなど、技術革新に関わる投資に大きく傾注する姿勢を印象付けた。

 具体的には、Softbank Vision Fundの投資先について「(AIの発展などにより)コンピューターと人類の知能が逆転する『シンギュラリティ(技術的特異点)』が起こり、それによってあらゆる産業が再発明される。新ファンドはその再発明されるところに投資する。いくつかのセグメントに特化せず、広く情報革命全般に行き渡る」と説明。必ずしもIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などの技術分野に限定しない考えを示した。

 例として、孫社長がIT配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズ(Uber)のトラビス・カラニックCEO(最高経営責任者)と会い、早い段階で投資する機会がありながら見送ってしまったというエピソードを披露。Uberの現在のサービスはIoTやAIとの関わりが深いとは言えないが、Uberのように技術を活用して既存産業を「再発明」している企業も新ファンドの投資対象になるとの趣旨を説明した。

 Softbank Vision Fundは、ソフトバンクグループが5年間で250億ドル以上を、サウジアラビア王国の政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が最大450億ドルを出資することを発表済み。今回の会見では、残りの投資枠について複数の政府系ファンドと出資交渉を進めていることも説明。さらに投資リスクを減らすため、大型の投資案件はソフトバンクグループによる直接のM&A(企業の合併・買収)でなく、Softbank Vision Fundや同種のファンドを通じて実施する方針を打ち出した。

 ファンドを通じた投資にする基準額は現在調整中だが、数百億円あたりに基準を置き、投資のリターンはファンドから得られる成功報酬になるという。ファンドを通じた出資により、今後は投資の加速と有利子負債の圧縮を両立させていく考えだ。スプリントやARMの買収などによりソフトバンクグループの純有利子負債は再び増加基調に転じた。2016年3月時点でEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益) に対する倍率は3.8倍、9月時点では4.0倍である。孫社長は「今後数年内にこれを3.5倍に圧縮する」と説明した。

 グループにおける孫社長の役割や業務の配分も大きく変わるという。米スプリントの経営再建という課題があったこともあり、直近は業務の大半を現在携わる事業に割き、「投資に割く時間は1割以下になっていた」。しかし今後は既存事業の経営は各事業を担当する経営トップに任せ、孫社長は投資の意思決定に大半の時間を割くとした。

 既にY!mobileブランドを含む通信事業は宮内謙ソフトバンク社長が指揮を執り、ヤフーも独立した経営体制を持つ。スプリントについては、孫社長が自ら「CNO(最高ネットワーク責任者)」に就き、携帯電話サービスネットワーク品質を改善する陣頭指揮を執ってきた。その成果により、電話やデータ通信の接続率などは大きく改善したとしており「CNOの仕事は残り1~2年で完遂するので徐々に手を離していく」(孫社長)。