「私にとってのIoTとは、インターネット・オブ・タクシー」。2016年9月9日に行われた「AWSソリューションDay 2016」の講演でこう切り出したのは、タクシー会社大手の日本交通会長で、現在は子会社のJapanTaxiの社長も務める川鍋一朗氏だ(写真1)。

写真1●JapanTaxiの川鍋社長
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 JapanTaxiはもともと、日本交通向けの配車システムを開発していたが、現在お手本にしているのはITベンチャー企業。ITベンチャー企業のようなスピード感と最新技術の活用によって、乗務員向けシステムだけでなく、顧客向けサービスのデジタル化を矢継ぎ早に進めている。今回の講演では、その一端が紹介された。

 なかでも代表的なのが、タブレット端末を活用した車内のデジタルサイネージ・システムだ。このシステムでは、広告用の動画の定期的な入れ替えが必要になる。動画コンテンツのサイズが大きいので費用はかさんでしまいがちだが、その費用を抑えるために選んだのが、AWSのクラウドサービスとソラコムのIoT向け通信プラットフォームだ。AWS Lambdaを活用し、通信料金が安い深夜時間帯になったら自動的にソラコムSIMのAPIを開いて、通信を始めるようにしたのだ。また、動画配信にはフリークアウトの広告配信プラットフォームを採用して位置情報を利用した広告を出すようにするなど、最新サービスを積極的に取り入れている。

 また、第3世代になり「新次元に入った」と自負するのが、同社が開発した配車アプリ「全国タクシー」だ。同アプリの最新版で取り入れたのが、条件によって料金を柔軟に変えられる「ダイナミックプライシング」である。

 具体的には、どうしてもタクシーを利用したい場面で追加料金を支払うことで優先的に配車される機能、混雑状況にかかわらず見積もり料金通りの支払いで済む機能、相乗り時の割り勘機能を追加した。

 乗務員向けサービスの開発にも取り組んでいる。試験的にNECと共同開発したのが、売り上げが伸びない運転手向けに「お客さんをつかまえやすい場所」を示してくれる「魚群探知機」のようなシステム。同システムでは、過去1時間以内にお客さんを乗せた場所が、タブレット上で色濃く表示される。その場所では、何らかのイベントが開催されているなど、タクシーを利用したい人が集まっているところというわけだ。

 リアルとITの連携サービスに取り組む同社だが、机上の想定通りに進まないのもリアルの世界ならではのこと。タブレット端末の導入では、取り付け位置を運転席と助手席の間にしたところ、お客さんが手すり代わりにつかまって破損するトラブルに見舞われた。また、電源がオフになったままの端末がいくつかあったことから調べてみると、深夜時間帯に「まぶしいから消してほしい」と言われて電源を切り、そのままになっていることが分かったことがあった。

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