写真●新日鉄住金ソリューションズの北村公一取締役 副社長執行役員
(写真:井上裕康)
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 「工場の製造ラインには必ず人が関与する。IoT(インターネット・オブ・シングス)と、ヒトとインターネットがつながるIoH(インターネット・オブ・ヒューマン)がセットで初めて生産性向上や安全性の確保が実現できる」――。2015年7月6日、東京・品川プリンスホテルで開催された「IT Japan 2016」(日経BP社主催)に登壇した新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)の北村公一取締役 副社長執行役員は力を込めた。

 北村副社長は、「モノづくりを進化させるIoXイノベーション」と題して講演した。IoXとはIoTとIoHの総称で、NSSOLが提唱するソリューションのこと。製造業では、「多かれ少なかれ、ERP(統合基幹系システム)やSCM(サプライチェーン管理)といった業務システムと現場のデータが統合されておらず」(北村副社長)、両者の連携を支援するソリューションが必要だという。

 北村副社長は講演の中で、IoHの事例を紹介した。製鉄所の現場作業員の状態を逐次モニタリングし、遠隔の管理センターから指示を出す取り組みだ。現場作業員が持つスマートフォンやスマートウォッチによって、位置情報や動作状況、心拍数といったデータを収集。例えば、危険な作業に当たっている現場作業員の安全確保のため、管理センターにいるベテランの作業員がリアルタイムで注意や指示を出せるようにしている。現場作業員が装着するAR(拡張現実)機能を搭載した眼鏡のモニターを通して、指示を与えることも可能だ。

 作業の効率を高める取り組みにも力を入れる。UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)タグやスマートウォッチを作業員に付け、作業データを収集。ディープラーニングによって、効率的な作業方法を導き出し、実際の作業に生かす。

IoTは打ち上げ花火ではダメ

 盛り上がりをみせるIoTに、こうしたIoHのデータを組み合わせて分析することで、より生産性が高く安全な製造プロセスを実現できるという。さらに、IoTやIoHのデータを製品開発プロセスにフィードバックして改善を図るのは、「製造業の理想の姿」と北村副社長は語る。

 しかし、「念頭に置かなければならない課題がある」(北村副社長)。それが、業務システム同士の連携、あるいは業務システムと現場との連携である。

 北村副社長によると、業務システムでも十分に連携できている例ばかりではないという。PLM(製品ライフサイクル管理)とERPの部品表(BOM)を、連携できていないこともある。さらに、業務システムと現場間でデータが統合されていないケースもあり、「最終的に人の勘と経験に頼ることが珍しくなく、個別最適に陥っている」(北村副社長)。

 こうした課題を解決するためNSSOLは、業務システムのデータと、ウエアラブルデバイスなどが生み出す現場データとの統合を実現する「IoXプラットフォーム」を提供する。ビッグデータの解析基盤である同社の「Data Veraci」と連携させられるようにしている。

 「IoTの取り組みでは、打ち上げ花火のように派手な事例が多い。ただし実際にビジネスを伸ばして投資を回収するには、PDCAサイクルを回し続けられる環境が欠かせない」と、北村副社長は主張する。そのためには、「業務システムのデータと現場データを連携させることがとても大切だ」(北村副社長)とする。

 最後に北村副社長は、2016年4月にNSSOLが「IoXソリューション事業推進部」という専門組織を新設したことを明らかにした。「顧客と共に考え、答えを探していきたい」と会場に呼びかけ、講演を締めくくった。