写真1●アズビル 業務システム部 運用管理グループの松原健グループマネージャー
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写真2●クラウドとオンプレミス環境を様々な観点から比較
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写真3●障害発生のイメージ
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写真4●今後の展開
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 「クラウドで基幹システムを動かすなんてあり得ないといわれていたが、実行した。4年間で約1億円のコストダウンが見込め、デメリットもほぼ感じていない」。こう話すのは、アズビル 業務システム部 運用管理グループの松原健グループマネージャー(写真1)。同社は2015年5月から、SAPを用いた基幹システムをAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)上で稼働させている。2016年6月2日、「AWS Summit Tokyo 2016」で、AWS上でSAPを1年間運用した経験を語った。

 AWS上に構築したのは、販売管理や生産管理、在庫管理、人事管理、財務会計などのシステム。オンプレミス(自社所有)環境では大きく三つに分かれていた基幹システムを、グローバル展開強化への対応などを目的にSAPに統合した。ユーザーは約1万人で、SAP稼働環境の性能を示す「SAPS」は4万2000に上る。

 AWSを稼働環境に選ぶに当たって重視したのは、サイジングやコスト。柔軟にハードウエア構成を変えられること、BCP(事業継続計画)対策が低コストでできることなどを評価した。クラウド採用を検討していた2013~2014年当時、国内企業でAWS上のSAP構築事例が相次いで出てきたことも後押しになった。

 移行決定までは細かな検討を重ねた。コストや性能、可用性、拡張性、バックアップなど様々な項目でオンプレミス環境と比較し、AWSが優れていることを確認した(写真2)。それでも、クラウド活用の経験がない社内担当者の不安はなかなか消えなかった。複数のベンダーに意見を聞いて自社が見落としているリスクがないかを確認する、懸念点を直接AWSにぶつける、PoC(概念実証)を実施するといった工程を経て、「ようやく担当者も安心した」(松原氏)。経営層からの理解は、すんなり得られたという。

 実際に稼働させてみて、システムをコピーするだけで検証環境が用意できる、ハードの修理対応が不要といったメリットを実感しているという。インフラ運用をほぼ一人で担当できるなど、運用の手間も大幅に減った。コストも、オンプレミス環境に比べて4年間で1億円削減できる見込みだ。

 一方で、「障害の発生頻度はある程度多い」と松原氏は話す(写真3)。この点は事前の調査などで把握しており、対策としてデータベースを2重化しているという。AWSでは障害の再発防止も困難だが、「再発を前提に対策をすれば、オンプレミス環境よりもメリットは大きい」(松原氏)。

 今後は、AWSの導入範囲を顧客管理やBI(ビジネス・インテリジェンス)などのシステムにも広げる方針(写真4)。グループ会社への展開も予定する。さらに「AWSの新サービスの活用など、基幹システム以外でのAWS利用も検討している」(松原氏)。