写真1●キヤノン 映像事務器事業本部 映像事務器DS開発センターの八木田隆主席研究員
(撮影:渡辺 慎一郎=スタジオキャスパー)
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写真2●各チーム間が、APIやログを基にコミュニケーションする
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写真3●AWS移行による成果
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 「七つのサービスを、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に移行した。年3回だったリリースが、週に複数回できるようになった」――。キヤノンは、2016年6月1日から開催中のイベント「AWS Summit Tokyo 2016」で、プリンティングなど自社の顧客向けサービスのAWS移行事例を発表した。開発期間の短縮やシステムトラブルの減少、セキュリティ向上など「これほどの成果が上がるとは、正直言って我々もびっくりしている」(映像事務器事業本部 映像事務器DS開発センターの八木田隆主席研究員、写真1)。

 同社がAWSの活用を始めたのは2014年。同社製複合機とスマートフォン、パソコンなどを連携し、印刷したり複合機から情報を収集したりする顧客向けサービス7種類を、AWSに移行した。

 従来は、インフラの障害対応などに手間がかかってサービスそのものの強化に注力できない、新版をリリースするための開発やテストの工数が多く1年に3度程度しか実施できないといった課題を抱えていた。作業の自動化が難しい、取得できるログに限りがあり監視や管理がしにくいといった問題もあった。

 こうした問題を解決するために選択したのがAWS。「AWSは全てがAPIであり、APIで全てを制御できる」(八木田氏)というAWSの考え方に魅力を感じた。AWS移行に当たって自社サービスも適切な単位に分割/分類し、APIで疎結合する。開発やテスト、運用を担当するチームも、APIを基にやり取りすることでコミュニケーションを効率化する(写真2)。独立性が高い小規模なサービスの組み合わせでソフトウエアを構築する「マイクロサービス」と呼ばれる手法の導入も進めた。

 さらに、継続的インテグレーション(CI)を実現するためのプラットフォームを構築。各種作業を自動化した。APIが実行されるたびにログを記録する仕組みも作り、漏れのないシステム監視や継続的な改善につなげた。

 これらの取り組みによって週に複数回のリリースが可能になったほか、インフラやネットワークなどのトラブルの件数が5分の1、専門家による脆弱性診断で判明した問題の数が4分の1に減少(写真3)。7種類のサービスのうち最も効果が上がったものでは、コード量や運用コストが5分の1、インフラコストや評価の工数が4分の1、開発期間が3分の1に減るといった成果があったという。

 「AWSへの移行で、エンジニアがやるべきことが明確になった。以前に比べて人が元気になったのを実感している」(八木田氏)。今後も工夫を重ねて、品質やコスト、開発スピードを改善していきたいと講演を締めくくった。