東京大学大学院情報学環長・大学院学際情報学府長を務める須藤修教授
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 「マイナンバーは社会の根幹を良くするためのものであるべきだ」――。東京大学大学院情報学環長・大学院学際情報学府長を務める須藤修教授は、2015年3月19日『民間企業のための「マイナンバー」カンファレンス』(日経コンピュータ主催)の基調講演でこう語った(写真)。マイナンバー(社会保障と税の共通番号)制度がなぜ必要か、そのためにどんなシステムが稼働予定なのかを、法案作成に携わった立場から解説した。

 須藤氏は、民主党の菅直人政権時からマイナンバー制度に関して政府にアドバイスを行ってきたという。当初から、「国民の管理を強めるだけでなく、社会を良くするために導入すべき」と主張し続けてきたと話す。

 須藤氏は震災時の被災者支援を例に、マイナンバー制度がどう生きるかを具体的に説明した。自治体は被災した人を正確に把握できるほか、レセプト(診療報酬明細書)のデータを結びつけることで、各避難所に避難している人の疾病も分かる。この結果、医療物資を迅速・的確に調達できるようになる。他の自治体に避難した人のデータを簡単に移転したり、避難先で素早く罹災証明を出したりすることも可能だ。

 銀行や保険会社などの民間企業と連携することで、さらなる支援も可能になる。例えば保険金請求の手続きが手軽にできるようになったり、銀行カードを消失しても迅速に預金を引き出せるようになったりすることが期待される。

 格差是正にもつながるという。預金の口座にも番号を付与することで、個人の預金や有価証券の取り引きなどを把握できるようになる。これにより、資産に応じた累進課税が可能になる。須藤氏は、『21世紀の資本』を著したトマ・ピケティ氏を引き合いに出しながら、「資産課税は格差是正のためのツールになる」と指摘。現在の医療介護制度を維持しようとすると2025年には財政破綻するとの見通しを示しながら、その回避のためにも累進課税が必要だと述べた。

 マイナンバー制度を支えるシステムの要点も解説した。自治体と他団体との間で符号を用いた住民情報の連携を実現する「中間サーバー」や、中間サーバーの配備におけるクラウドの活用、災害時を想定したバックアップ態勢などである(関連記事:中間サーバーはデータ移行に有用、業務フロー可視化で調達改革を)。利用者が自分に情報を見たり、お知らせを受け取ったりできるシステム「マイ・ポータル」も紹介した。

 セキュリティ確保についても言及。個人に交付される「個人番号カード」に記載される個人番号とシステム内部で扱う番号を別々にしていること、認証方法としてバイオメトリクス(生体認証)を有望視していることなどを説明した。