写真1●「コーポレートフェローシップ」の概要
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写真2●自治体と市民コミュニティ、フェローを派遣する企業の3者それぞれにとってメリットのあるプログラムだという
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写真3●コード・フォー・ジャパンの代表理事を務める、関治之氏
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写真4●SAPジャパンの奥野和弘氏。福井県鯖江市でフェローとして1カ月半活動した
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写真5●SAPジャパンの村田聡一郎氏。高度人材育成の場として、コーポレートフェローシップへのニーズは高いと分析した
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 コード・フォー・ジャパンは2015年1月7日、地域の課題解決を目指す自治体と、従業員の人材育成の場を探す企業とを結びつけるプログラム「コーポレートフェローシップ」を発表した。企業が「コーポレートフェロー」として従業員を自治体に派遣し、自治体の職員と共にオープンデータ活用などによる課題解決に取り組む。両者をコード・フォー・ジャパンが仲介する。

 コード・フォー・ジャパンは、地域の課題解決のためのコミュニティ形成や、テクノロジーを活用した公共サービスの開発/運営を支援する一般社団法人。高度なIT人材を自治体に派遣する「フェローシップ」事業も2013年から実施しており、現在、福島県浪江町で2名のフェローが活動している(関連記事:全町避難の福島県浪江町が町民にタブレット1万台配布へ、今後1年かけ準備)。

 今回発表したコーポレートフェローは、企業からフェローを募るプログラム。企業から自治体に派遣された人材が、地元の市民コミュニティなどと共に地域の課題解決をする(写真1)。同日からコード・フォー・ジャパンが希望自治体の募集を開始した。応募を元に必要な人材像を定義し、2015年2月中旬ごろから参加企業を募る計画だ。その後企業と自治体とをマッチングし、3カ月程度を目安にコーポレートフェローを自治体に派遣する。人材としては、各企業でリーダー的な存在として活躍する人を想定しているという。

 派遣される人材の給与は、企業が負担する。また企業はコーディネートフィーとして、1件当たり50万円程度をコード・フォー・ジャパンに支払う。

 コーポレートフェローを活用すれば、自治体は費用負担なく課題解決に取り組める(写真2)。企業にとっては、人材育成の場として活用できる。加えて「自治体の状況を知ることで、新規事業の創出にもつながる。また、CSR的な効果もある」と、コード・フォー・ジャパンの関治之代表理事は話す(写真3)。

 2014年には、トライアルとしてSAPジャパンが福井県鯖江市にフェローを派遣した。鯖江市はオープンデータ活用において先進的な取り組みを行っているが、市民参画が十分に進んでいるとは言い難い状況という。そこで、SAPジャパンの奥野和弘氏がフェローとして現地で1カ月半にわたって活動。最終的に市民によるアイデアソンを開催したほか、それを継続的に実施する仕組み作りにも取り組んだ。

 奥野氏は、「SAPジャパンに勤務した5年間の中で、この1カ月半が一番きつかった」ともらす(写真4)。自分と全く違う文化的背景や価値観を持つ人とのコミュニケーションをはじめ、何が問題かすら分からない状態から課題を見つける、自ら協力者を得てリーダーシップを発揮するなど、困難の連続だったという。だがそのぶん、「ものすごい学びがあった」(奥野氏)。相手に伝わるコミュニケーションとはどんなものかを考え直したり、広い視野で課題を捉えることの重要性に気付かされたりしたという。

 奥野氏を鯖江市に送り出した、SAPジャパン ストラテジーオフィスの村田聡一郎シニアマネージャーは、コーポレートフェローシップが大企業の人事部からかなり引き合いがあるだろう、と見る(写真5)。「リーダーシップ人材、グローバル人材と呼ばれる、新たな分野を自力で切り開ける能力や胆力を持った人を育てたいという話は、どの企業に行っても必ず聞く課題。経営課題のかなり上の方に位置付けられている」(村田氏)。だが実際には、言葉の違いや治安面での不安などの問題から、その育成の場を用意するのは難しい。

 コーポレートフェローシップなら、「あくまで日本国内で、相手は自治体という安心感がある。その中でもまれることができるプログラムが、たったの50万円プラス人件費で提供できるのはかなりお得感がある」(村田氏)という。

 コード・フォー・ジャパンでは、3年間で100を超える自治体にコーポレートフェローを派遣することを目標とする。既に、千葉市など複数の自治体が興味を示している。企業側も、複数のIT企業が前向きに検討しているという。