学術書を取り扱う出版社6社と丸善、京セラ丸善システムインテグレーション(KMSI)は2014年9月12日、大学図書館向けの書籍販売サービス「新刊ハイブリッドモデル」の開始を発表した。出版社が今後刊行する学術書について、紙の冊子と電子書籍をセットで販売する。新刊の電子版を求める声に応えた。学術機関向けサービスとしては国内初という。サービスは9月から開始する。100前後の図書館への導入を当面の目標とする。

写真1●「新刊ハイブリッドモデル」に参加した企業の幹部
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●2つのプラットフォームで電子書籍を提供する
[画像のクリックで拡大表示]

 出版社は慶應義塾大学出版会、頸草書房、東京大学出版会、みすず書房、有斐閣、吉川弘文館が参加した(写真1)。電子書籍の提供方法は、丸善の電子書籍閲覧サービス「eBook Library」とKMSIの電子図書館プラットフォーム「BookLooper」の2系統ある。出版社は両方にコンテンツを登録する(写真2)。

 eBook LibraryはWebブラウザーを通じて利用する。電子書籍の同時アクセス数には制限がある。BookLooperは、貸し出し・返却型のシステム。スマートフォンやタブレットなどに書籍を持ち出して利用できる。

 新刊ハイブリッドモデルで提供する電子書籍は買い切り型。月額使用料などは掛からない。電子書籍の価格には、eBook Libraryでの同時アクセス数が1つのライセンスと、BookLooperでの貸し出しライセンス3つが含まれている。このため、紙の書籍単品よりは高額になっている。

 電子書籍の価格は、例えば慶應義塾大学出版会「経済学ではこう考える」だと、紙版が1500円なのに対し電子版は4700円。みすず書房「映画音響論」は紙版6800円に対し電子版2万2500円となっている(いずれも税別)。

 毎月1回、出版社が新刊リストを提示、図書館が購入する書籍を選ぶ。電子書籍には割引サービスがある。新刊リストの全ての書籍と電子書籍を購入すると、電子書籍分が3割引になる。紙の書籍数冊と電子書籍全てだと、電子書籍分が2割引になる。いずれも数冊だと1割引。電子書籍のみだと正価での購入になる。

 大学図書館の予算は横ばいながら、電子ジャーナル/電子書籍への支出は年々増加している。学術書の電子化は、2012年ごろから進んでいるが既刊が中心で、新刊の電子版を求める声が大きくなっていた。

 出版社は、慶應義塾大学を中心に8つの大学の図書館が実施した「大学図書館電子学術書共同利用実験」に参加。大学図書館における学術書の利用率を調査したり、利用者の意見を集約するなどして、実験期間である2010年12月から2014年3月まで市場性を探っていた。

写真3●東京大学出版会の黒田拓也専務理事
[画像のクリックで拡大表示]

 このサービスにはほかの出版社も参加可能。特別な条件はなく分野も問わないという。東京大学出版会の黒田拓也専務理事(写真3)は、電子書籍は利便性の高さが評価されているとした上で「本サービスで電子書籍を充実させることで学生が書籍を深く読むことに期待する。業界が活性化する良い循環を作りたい」と述べた。