ウォール・ストリート・ジャーナルでiPadやスティーブ・ジョブズの肝臓移植をスクープした元アップル担当記者のケイン岩谷ゆかり氏が、著書『沈みゆく帝国』の発行を機に来日している。7月12日には、石川県・金沢市の起業家支援団体であるGUEDAにて、日経BP社技術情報グループスマートデバイスプロジェクトの林誠プロデューサーが司会し、代表理事の宮田人司氏との対談イベントが開かれた。宮田氏は27年来のアップルユーザー、iモードの着メロ事業を最初に立ち上げたイノベーティブな起業家、そして現在はクリエーターでもあり、起業家を支援する立場でもある。

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写真1●対談するウォール・ストリート・ジャーナルでiPadやスティーブ・ジョブズの肝臓移植をスクープした元アップル担当記者のケイン岩谷ゆかり氏(右)、石川県・金沢市の起業家支援団体であるGUEDA代表理事の宮田人司氏(左)

ジョブズが生きていたらこれほど取材はできなかった

宮田:僕はアップルの古くからのユーザーで、アップルの本や文献はたくさん読んできましたが、岩谷さんが書かれた『沈みゆく帝国』ぼど臨場感があり、情景や会話のディテールまで書かれた本は初めてでした。いったいどれほどの取材と分析を進めたのかと思うと恐ろしいくらいです。どんなふうに書かれたのですか?

岩谷:当初は、次々とイノベーションを生み出すアップルが、どう成功してきたのかという話を書こうと、本の企画書を書きました。ところが、作業に取りかかったころに、スティーブ(・ジョブズ)が亡くなり、状況が変わりました。取材をするうちに、アップルをめぐる状況が変わりつつあることが分かり、これまでのアップルよりも、アップルがこれからどうなるかを書こうと切り替えました。

 取材の過程では、スティーブが亡きあともアップルは偉大な企業でいられるのかという問いを抱きながら、作業を進めました。取材では200人近くに話を聞きましたが、私があまりに細かいことを何度も聞くので、「もう電話してくるな」「これが本当に最後だぞ」といやがられながらも、しつこく聞かせてもらいました。

 アップルは秘密主義で、関係者の方たちもなかなか取材には応じてくれないのですが、最初は取材ではなく聞いた話は書かないので会ってほしいと話し、その後信頼関係を築いて本のインタビューをさせてもらうという手順を踏みました。大変な作業ではありましたが、スティーブが生きていたら、これほど取材を受けてもらえなかったと思います。スティーブを恐れている人は多かったです。

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