RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール導入時のポイントを今回から数回に分けて具体的に解説する。まずは成功の鍵を握る「試行導入」について見ていく。

 試行導入はRPAの導入プロセスの1つである。通常は「計画」「試行導入」「本格導入」「運用/保守・全社展開」という流れで進めていく。

 計画ではRPAを導入する目的や目標を明確にした上で、導入計画を策定する。これに続くのが試行導入だ。自社にRPAを導入できるかを検証し、導入効果を試算するのが狙いである。

 RPAツールを利用するだけで何の苦労もなくRPAを導入できるわけではない。本格的にRPAツールを利用する前の段階的な準備が欠かせない。試行導入はこの準備作業に当たる。

 試行導入を通じて得られた成果や課題は本格導入の可否を判断する重要な材料となる。本格導入時に業務を選定したり、運用ルールを策定したりする際のインプットとしても利用する。

図 RPAの導入プロセス
「試行」は準備作業に当たる
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様々な業務に適用してみる

 試行導入のプロセスは(1)計画/業務選定、(2)導入環境準備、(3)シナリオ(処理フローを定義した設定ファイル)実装、(4)試行運用/効果把握の4段階から成る。通常は2、3種類の業務を対象に約2カ月で検証する。

 RPAを適用する業務を選ぶ際は通常、「定型・大量・繰り返し」の作業かどうかで判断する。試行導入も基本は同じだが、違う観点でも業務を選ぶのが望ましい。試行導入の段階で自動化に適する業務だけでなく適さない業務を見つけておけば、その結果を本格導入時に生かせるからだ。

 ある企業は試行導入の際に、定型・大量・繰り返し業務のほかに、以下の2種類を選んだ。

  1. 手順が属人化しており、過去に事務ミスが発生している業務
  2. 事務マニュアルがシステムやExcelの操作手順のレベルまで詳細化されている業務

 1にはマニュアルが存在したものの、記述が必ずしも詳細でなく、行間を読む必要があった。このため、業務に通じていないとマニュアルを使いこなせなかった。

 結果的に、この業務は試行導入期間内に自動化できなかった。属人化された手順の理解に時間がかかったためである。一方で、試行導入を通じて「RPAの導入前に業務の可視化が必要」という示唆が得られた。

 これに対し、2は当初予定の3分の1の期間で自動化できた。マニュアルの説明が詳細で、対面でのヒアリングが不要だったからだ。2を対象にした試行導入を通じて、「マニュアルはどの程度詳細に書かれている必要があるか」に関するレベル感を把握できたという。

 RPAにどのような業務が適するか、適さないかはインターネットでもある程度調べられる。ただ、それらは目安に過ぎず、各社の事情によって本当に適するかの判断は異なってくる。試行導入時に様々な業務に試し、何が自社に合っているのかを確認することをお勧めする。

スモールスタートが大切

 試行導入時には「情報照会だけ」のように影響範囲が小さい業務を選ぶのが望ましい。データを更新する業務を対象にすると、テストのたびにデータ更新処理をスキップする、あるいは停止するといった手間が生じる。本番環境でしかシナリオの実装やテストができない業務を選ぶと、テストの際にシナリオが意図しない挙動をするなど、対外的に影響が発生するリスクも考えられる。

 影響範囲を小さくするには、最初から大きく始めないことが大切だ。投資額を抑え、社内事務などから業務の一部を切り出して適用するなど、スモールスタートで始めたい。

 シナリオの設定を誤って意図しない挙動をしたとしても、社内事務であればすぐに復旧できる可能性が高い。試行導入時に余計なストレスを感じずに、シナリオづくりや課題の洗い出しに注力できる。

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