未来に向けてビジネスを進化させ、担い手の知恵を生かす。情報システムを用意し、使う理由はそこにある。そのためには扱う情報の構造を把握しなければならない。

 企業や団体が情報システムを構築ないし調達し、運用するのは一体何のためか。2018年にこう聞いてくる経営者はさすがにいないと思われるが、情報システムの責任者や担当者は年度末など節目の時期に自問自答し、答えの通りの情報システムを持てているのか、確認してはいかがだろうか。

 ビジネスを担う組織と人のあるべき姿、そこにおける情報システムの役割、その役割を果たせる情報システムの設計方法といったテーマについて、手島歩三氏(ビジネス情報システム・アーキテクト代表)から伺った話を数回に分けてお伝えする。手島氏はアーキテクトとして企業のビジネス改革や情報システム設計を支援すると共に、製造業の情報基盤整備に取り組む特定非営利活動法人、技術データ管理支援協会(MASP=Manufacturing Architecture for Series Products)の理事を務めている。

「企業が目指す姿は何か」

 企業は何らかの価値を社会に提供するために存在する。役割を果たすためには、企業が手がけるビジネス、担い手である組織と人、それらが共に進化し続けなければならない。

 ビジネスあるいは組織の進化とは、構成員である人の進化であり、人が持つ知識や知恵が豊富に、より良くなることである。市場の変化に応じて大きな価値を提供するために、知識や知恵を使って何らかの改革案を考え、実行し、それを通じてさらなる知識や知恵を獲得する。こうした活動を繰り返すことで、ビジネス、組織、人がそれぞれ進化し、人々は生き生きと働けるようになる。

 そのためには、ビジネスで取り扱う計数、人々の知識や知恵といった情報を記録、分析、利用する仕組み、すなわち情報システムが欠かせない。この定義であれば情報システムについてコンピュータを使わなくても実現できるが、記録や分析のことを考えるとコンピュータを使ったほうが便利である。

「製造業が目指す姿は何か」

 情報システムは未来に向けた価値提供のために使う。未来に向かって市場や顧客は多様性を増し、変化していく。簡単ではないが、企業はある程度まで先を読んで行動し、予想とは異なる事態になったら素早くやり方を見直し、対応する。

 製造業であれば、見通しに基づく計画を立て、変化に応じて工程を素早く組み替える。市場や顧客に接する営業部門、製品を作る製造部門と協力会社、そして資材を調達する部門など企業内外の組織が同期を取りつつ、連携していく。具体策としてMASPは工程を登録できる部品表やスケジューラソフトウエアを開発、提供している。

 未来に向けた計画とスケジューリングのために、そして現場の情報共有と意思疎通のために、情報システムは役立つ。前提として、情報システムはビジネスにおける事実を正確に記録しておく必要がある。しかも、ビジネスと組織の進化に合わせ、情報システム自体も進化していかなければならない。

 ところが残念ながら、現状を見渡すと、情報システムが進化できず、ビジネスと組織の足を引っ張っている例が散見される。製造業であれば、日本の強みである多品種少量生産に合わない業務パッケージソフトウエアを採用した失敗事例がある。もう一度、情報システムの役割を確認し、設計からやり直すことが望ましい。

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