米マイクロソフトは2016年6月29日(現地時間)、Windows 10の次期メジャーアップデート「Windows 10 Anniversary Update」を8月2日に公開すると発表した。同社は同アップデートについて、Windows 10の正式版を投入した2015年7月29日の1周年を記念したものとしている。同アップデートにおける企業ユーザー向けの機能追加や、Windows 10の導入状況などについて、米マイクロソフトでWindows 10の法人ビジネスを手掛けるマイケル・ニーハウス氏に聞いた。

写真●米マイクロソフト Windowsコマーシャル プロダクトマーケティング ディレクターのマイケル・ニーハウス氏
[画像のクリックで拡大表示]

Anniversary Updateについて、企業ユーザー向けの機能拡張を教えてほしい。

 Windows 10では、常に最新の機能を提供する「Windows as a Service」という考え方を導入している。この考え方に基づき、Anniversary Updateでも顧客からの要望を受けて、多数の機能拡張を実施している。

 Windows 10に対して企業ユーザーから特に関心が高いのが、セキュリティに関する機能だ。Anniversary Updateでは、標準搭載のウイルス対策ソフトである「Windows Defender」を強化した。ウイルスの侵入を防止するだけでなく、仮に悪意のあるソフトウエアが企業内のネットワークに侵入した場合でも、通常とは異なる動作を検知してIT部門に警告を送る。

 「Windows Information Protection」という機能も追加した。これは従来、「Enterprise Data Protection」と呼ばれていたものだ。企業のデータと個人のデータをOSが分離し、企業のデータを暗号化することで漏えいを防止できる。

 IT部門が指定したソフトウエアしか実行できないように設定できる「Device Guard」という機能もある。ほかにも仮想化技術を使って、ユーザーの認証情報をWindows 10のOS領域とは異なるパーティションに隔離する「Credential Guard」など、数多くの機能強化を施した。

2015年7月29日にWindows 10の正式版が登場してから、2015年11月にはメジャーアップデート版を投入している。今回のAnniversary Updateも含めて、今後も1年間に2回のペースでメジャーアップデート版を投入するのか。

 その計画だ。Windows 10では利用者に合わせて機能更新のタイミングを分けている。企業ユーザーの場合、最新のメジャーアップデート版が登場してから、約4カ月後に機能更新が適用されるCBB(Current Branch for Business)の利用が一般的だろう。

 CBBの場合、新しいバージョンのCBBが登場すると、2つ前のバージョンのCBBのサポート期間が終了になる。例えばAnniversary Updateの投入から約4カ月が経つと、Anniversary UpdateのCBBが登場する。これに伴い、2つ前のバージョンであるWindows 10の初期版のCBBはサポート終了となる。

 ただし、移行猶予期間としてサポート終了から60日間はパッチ(セキュリティ更新プログラム)の配布を続ける。60日を過ぎるとパッチの配布も終わるため、CBBを利用する企業ユーザーは別の新しいバージョンにアップデートする必要がある。

定期的に無償で最新の機能が提供されるWindows as a Serviceの考え方は魅力的だが、常に新しいバージョンの検証に迫られる企業のIT部門にとっては負担が増えるのでは。

 確かにIT部門にはOS更新の考え方を変えてもらう必要がある。従来は3~5年に1度、OSの大きなバージョンアップがあった。検証の期間は長く取れる分、全ての業務アプリケーションを検証したり改修したりするため、膨大な手間と費用がかかっていた。

 Windows 10では1年に2回大きな更新があるため、毎回全ての業務アプリを検証するのは現実的ではない。Windows 10のバージョン更新は、過去のOSアップデートに比べて更新前後の互換性は全体的に高い。

 まずは業務上重要なアプリを優先的に検証し、正しく動作すれば他のアプリは問題無いと見なすといった割り切りも必要だ。仮に更新した後で何かのアプリに問題が出たら、その都度対応すればいい。これによって検証の回数は多くても、1回の費用や手間は抑えられる。

現時点でのWindows 10の導入状況はどうか。2018年末までにWindows 10が動作する機器を10億台にする目標には届きそうか。

 目立った導入事例では米国防総省が2016年2月に、400万台の端末のOSをWindows 10に移行する計画を発表した。大きな理由はセキュリティの強化だ。業界を問わず、セキュリティを重視してWindows 10への移行を決める企業ユーザーが増えている。

 現在、Windows 10は3億5000万台以上の機器で稼働している。ここまでは計画通りのペースで増えており、このまま行けば10億台の目標は達成できる見込みだ。

 ただし、目標達成には現在Windows 7や同8.1を使っている企業ユーザーがWindows 10に移行してくれることが前提にある。一般ユーザーに対しても、2016年7月29日にWindows 7/8.1からWindows 10への無償アップグレードが終了することに懸念がある。無償であるにも関わらずWindows 10に移行しなかったユーザーが、有償になった後でWindows 10に移行してくれるかは分からない。

無償アップグレードの過程では、ユーザーから「意図せずアップグレードされた」などの苦情が出ている。Windows 10をアピールしたい気持ちは分かるが、ユーザーへの配慮が欠けた部分があったのではないか。

 苦情があったことは真摯に受け止めている。2016年7月1日には、無償アップグレードに関する通知ダイアログを変更し、「Upgrade now(今すぐアップグレード)」「Choose time(日時を設定)」「Decline free offer(無償アップグレードを拒否)」という3つのボタンを表示するようにした。これにより無償アップグレードを断ることが可能になった。

 7月29日までにすぐアップグレードする計画がない場合は、通知ダイアログの右上にあるウインドウを閉じるボタンを押せば、数日後に改めて通知ダイアログが表示される。完璧ではないかもしれないが、以前よりはユーザーにとって分かりやすくなっていると思う。