米エイラ・ネットワークスはIoT(インターネット・オブ・シングス)デバイスを開発するためのクラウドプラットフォームを提供するスタートアップ企業だ。同社はネットワーク接続モジュールやモバイルアプリ開発環境を、クラウドサービスと合わせて顧客企業に提供している。同社のサービスの強みと日本企業への期待についてデイビッド・フリードマン CEO(最高経営責任者)に聞いた。

エイラ・ネットワークスが考えるIoTの課題は。

デイビッド・フリードマンCEO(最高経営責任者)
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 多くの技術が必要なことだ。データを集約するクラウドの技術、デバイスからクラウドへデータを送る通信の技術、デバイスを操作するアプリを開発するモバイルの技術、そして収集したデータを解析する技術が必要だ。こうした技術を自社で全て用意できる企業は少ない。

 ハードウエアメーカーはIoTの恩恵を受けやすい。今までネットに接続していなかった機器がネットに接続することで、様々な新しい製品が生まれる。そのために必要な接続、クラウド、モバイルの技術は全てエイラ・ネットワークスが提供する。

具体的なサービス内容を教えてほしい。

 IoTデバイスの開発環境をクラウド上のプラットフォーム、クラウドとIoTデバイスを接続するための通信モジュール、IoTデバイスをスマートフォンやタブレットから操作するためのアプリ開発ツールを提供する。エイラの提供するサービスの狙いは、ハードウエアメーカーがハードウエアの開発に注力できる環境を提供することだ。

 企業がエイラのIoTプラットフォームを使う理由はたいてい、利用者の情報を収集するためだ。プラットフォームはデータ解析アルゴリズムを備えていて、利用企業は顧客がIoTデバイスをどのように使ったか、どういった使い方で苦労しているのかを収集して分析できる。

 データ収集や解析の技術やノウハウを持たない企業でも、プラットフォームを使って収集したデータを製品開発に役立てられる。通信モジュールのファームウエアやモバイルアプリは、ネットワーク越しに更新できる。

 エイラはパートナー企業と連携して、サービス利用企業に無線通信用のWi-Fiチップとそれに接続するマイクロコンピュータを組み合わせたモジュールを提供する。通信用のモジュールは村田製作所やルネサスエレクトロニクスといった企業が提供するものだ。

 モバイルアプリ開発のために、エイラはAMAP(エイラ・アジャイル・モバイル・アプリケーション・プラットフォーム)を提供している。AMAPは、構築済みのテンプレートを使ってロゴ画像やテーマ色の設定をするだけでモバイルアプリが作れる開発環境だ。利用企業はIoTデバイスの稼働状況を表示したり、遠隔操作ができるアプリを開発できる。

エイラのサービスを使った製品はどんなものがあるのか。

サービスの強みを力説するフリードマンCEO
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 多くの企業がエイラのプラットフォームを使い、そのうち約3割ほどの企業は既に製品を販売している。代表的なものではスマートフォンで解錠する米ハンプトン・プロダクツのドアロックや、自動で光量や室温を調整する米ハンター・ファンのセーリングファン、建物の構造に合わせて出力を自動調整するカナダのディンプレックスが販売するヒーターシステムがある。富士通ゼネラルのスマートフォンで操作できるエアコンも代表例だ。

 エイラの強みは世界中で同じ基盤を使えることだ。日本の製品は海外で高い信頼を持っている。日本企業はエイラのサービスを使うことで、海外顧客向けの開発機能をすぐに使える。

 例えばタニタの多機能体重計はアメリカの家庭で高い評価を受けている。こうした医療や健康の分野で日本企業の製品は特に高いブランド価値を持っている。こうした高いブランド価値を持つ日本企業にエイラのサービスを使ってほしい。

エイラのクラウドサービスを利用している企業のうち、通信モジュールやAMAPを使っている企業の割合はどのくらいか。

 ほとんどの企業が使っている。通信用のWi-Fiチップは全ての企業が使っている。自社で開発するよりも購入したほうが安くて性能が良いからだ。Wi-Fiチップに接続するマイクロコンピュータも8割以上の企業が使っている。

 AMAPも大半の企業が使っている。モバイルアプリ開発の技術がなくてもAMAPを使えば、操作性や見栄えのよいアプリが作れる。AMAPを使わない企業も、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を使ってモバイルアプリを開発している。

クラウド基盤はには何を使っているのか。

 エイラのサービスは全てAmazon Web Services(AWS)上で動いている。AWS以外でもサービスのシステムは動かせるが、顧客企業やエイラがシステムの実行環境をを用意するより、AWS上で動かすほうが安全だと考えているからだ。AWSと同じ冗長性を確保するにはたくさんのエンジニアと大規模な資本が必要だ。

 AWSのような世界中に展開しているプラットフォームを使えば、企業が海外展開するときに同じ環境が使える。同じ環境を使うことで、海外で実績を上げたデータ取得方法や分析方法が使える。

日本企業からの反応はどうか。

 既に複数の企業がエイラのIoTプラットフォームを使って製品開発をしている。特に米国と中国での実績を評価されている。

 例えば、エイラのプラットフォームを使って中国版LINEとも言えるメッセージングアプリ「WeChat」と連動するIoTデバイスが開発できる。開発したデバイスの利用データを解析したアルゴリズムも使える。

 国際的な実績があること、IoTデバイス開発に必要な技術が全てそろうことが我々の強みだ。