EBPM(Evidence based policy making)とは、客観的な証拠(エビデンス)を活用して、政策の効果的・効率的な決定・運営を目指す取り組みです。欧米に続いて、近年は日本国内でも関心が高まっています。2018年1月に内閣官房行政改革推進本部が公表した資料「EBPMの推進」では、EBPMを“(1)政策目的を明確化させ、(2)その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、「政策の基本的な枠組み」を証拠に基づいて明確にするための取組”としています。

なぜ今EBPMなのか

 これまで政策形成の場面では、往々にして過去の慣行や利害関係者からの要求、政策立案者の勘や経験に基づくエピソード・ベースでの政策立案が行われ、ともすれば実効性に欠けるような施策が立案されてしまうことへの批判がありました。しかし、急速な少子高齢化の進展や、厳しい財政状況の下、地域や社会の持続可能性を保つためには、限りある政策資源を真に効果のある施策に配分し、有効に活用していくことが不可欠な情勢です。

 従来の政策に関する業績評価では、いくつかの成果指標を設定し、その実績を計測することにより効果を測定してきました。ただ、政策とその効果の間の因果関係について必ずしも明確な材料を提供するものではありませんでした。

 EBPMでは、客観的なエビデンスを社会科学的な手法により分析することで、政策とその効果の間の因果関係について、従来よりも信頼性の高い評価結果を得ることを目指します。政府統計のオープン化や計量手法の進展に伴い、ミクロ単位のデータを用いた実証分析がしやすくなったこともEBPMの導入機運を後押ししています。限られた政策資源を有効に活用し、国民により信頼される行政を展開するために、EBPMを適切に推進していくことが求められています。

EBPMにおける「エビデンス」とは何か

 何をもって「エビデンス」と呼ぶかについて、明確な定義があるわけではありません。たとえば欧州での議論では、エビデンスそのものは定義せず、EBPMについて経済協力開発機構(OECD)の定義を採用し、「政策オプションの中から決定し選択する際に、現在最も有益なエビデンスを誠実かつ明確に活用すること」としています。

 一般にEBPMでエビデンスとして重視されるのは、「ランダム化比較実験」の結果です(狭義のエビデンス)。ランダム化比較実験とは、実験群と対照群を無作為に振り分けて比較する方法です。ある効果が本当にその施策の実施に起因するものかどうかの因果関係を見極めるのに最適です。

 ただし、時間や費用がかかり過ぎること、実験群と対照群の振り分けに伴い公平性や倫理面の問題(一部の人にだけ効果のあるサービスを提供する、または一部の人にだけリスクのある処置を施す可能性)が生じうることなどの課題があります。

 このようにランダム化比較実験を実施できない場合でも、行政データの連携・組み合わせなどによって質の高いデータを活用できるようになれば、ランダム化比較実験と同等の信頼性のある評価結果を得られるようになる可能性があります。多様なリアルデータを活用するとともに、ICTなどによる分析を洗練させることで、信頼性の高い結果を得ることを目指すアプローチです。「広義のエビデンス」と言えるでしょう(図表1)。

図表1●EBPMで活用される「エビデンス」の範囲
出典:教育政策の評価手法研究会『プログラム評価の手法とその活用』p.37を基に作成
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 EBPMの考え方の下では、立案された政策とその効果を結びつけるために必要なロジックを持ち、それを裏付けるエビデンス(データ、情報)を示すことで、当該政策についての国民への説明責任を果たしていくことになります。そのためのツールのひとつがロジックモデルです(図表2)。政策の手段や目的に照らし、どの部分の評価を行うかを設計し、各段階では、それぞれ適切なエビデンスや分析手法を適用していく必要があります。

図表2●ロジックモデルの例
出典:厚生労働省のサイト(https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl_h30/mtg0508_07.pdf)
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