今や業種や業態を問わず、Wi-Fi(無線LAN)が広がっている。NTTグループのWi-Fiサービス用ネットワークを構築・運用するNTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の創業社長として10年以上にわたって普及拡大に腐心してきた小林会長に、Wi-Fi普及の背景や今後の可能性を聞いた。

最近のWi-Fi(無線LAN)の広がりをどのように見ているか。

小林 忠男 Tadao Kobayashi
1949年生まれ。1973年3月に早稲田大学理工学部電気通信学科を卒業し、日本電信電話公社(現NTT)入社。その後、NTTパーソナル中央取締役経営企画部長、NTTワイヤレス研究所無線方式部長などを経て、2002年7月にエヌ・ティー・ティー・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)代表取締役社長に就任。NTTグループの無線LAN(Wi-Fi)事業専業会社として、通信事業者向け設備卸事業およびWi-Fiクラウド事業を展開。2014年6月、同社相談役に就任。現在、同社顧問、無線LANビジネス推進連絡会会長、無料公衆無線LAN整備促進協議会議長、総務省委嘱の地域情報化アドバイザーを務める。

 これほどまでに普及するとは全くの予想外。まるで夢のようだ。

 転機は2008年のiPhoneとそれに続くAndroidスマートフォンの登場だ。スマホがやり取りするデータ量が急増し、携帯電話回線がパンクする恐れが出てきた。そこで携帯電話事業者は、iPhoneなどのスマホに標準で付いていたWi-Fi機能に目をつけ、Wi-Fiによるデータオフロード(振り替え)に乗り出した。そこからWi-Fi基地局(アクセスポイント)の設置を急ピッチで進めた。

 当時、私が社長を務めていたエヌ・ティー・ティー・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)のNTTドコモ向け基地局は、2012年の1万局から2013年には一気に12万局にまで増えた。今にしてみれば、よく1年でここまで打てたものだと思うが、これが最大の転機だった。

iPhone以前のWi-Fi端末と言えばノートパソコンで、外で使うなら公衆無線LANサービスのエリアを探したものだった。

 Wi-Fiの利用が進み出したきっかけは、無線LANカードを必要としないCentrino(セントリーノ)搭載のノートパソコンの登場と、3Gよりも高速なインターネットを屋外で利用できる公衆無線LANサービスの開始だった。一定の利用者拡大をみたが、結局のところ、ワイヤレスビジネスの成否は、インフラがきちんと作れるということと、使える端末があるかということに尽きる。

 今のスマホはLTE(Long Term Evolution)や3G(第3世代携帯電話)、Wi-Fi、Bluetoothが搭載され、マルチモード/マルチバンド端末が当たり前になっている。以前はそうではなかった。Wi-Fi機能を搭載した端末の開発を通信事業者や通信機器メーカに依頼しても、「いったい誰が買うのか。なぜうちが作る必要があるのか。敵に塩を送るようなものだ」と、なかなか受けてもらえなかった。利用者からすれば歓迎すべきことなのに、携帯電話事業者は二の足を踏んでいた。

 それなのに米アップルのスティーブ・ジョブズ氏は、何のためらいもなく3GとWi-FiをiPhoneに入れた。Wi-Fi事業者にとっては大変ありがたいことだった。

ところで携帯電話会社のオフロード需要は一段落した感がある。今後はどうなるのか。

 まず、携帯電話事業者がオフロード目的で公共スペースに設置したWi-Fi基地局を、マーケティングなどオフロード以外の目的に使おうという動きがある。コンビニや駅、空港といった場所でのWi-Fiスポットの実現だ。集客増や売り上げアップという成果が出ている。

 このほか、ホテルや自治体、学校など通信事業者以外の企業・団体が自らWi-Fi設備を保有する、いわゆるWi-Fiエリアオーナーが増えている。これでWi-Fiエリアのすそ野が大きく広がってきた。

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