欧州地域を中心にデータセンターやネットワークサービス事業を提供する英Coltは、アジア地域で同様の事業を展開するKVHを買収すると発表した(関連記事:データセンター事業者の英ColtがKVHを買収、どちらもフィデリティ子会社)。来日した英Coltのラケッシュ・バシンCEOに、買収の目的、今後の統合計画などについて聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション

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写真●英Coltのラケッシュ・バシンCEO

まずColtの概要、事業内容について教えてほしい。

 欧州で最大規模のクラウド・フットプリントを持つITサービスプロバイダーだ。独自の光ファイバーバックボーンを使ったネットワークサービス、音声サービス、データセンターサービス、エンタープライズ向けのクラウドサービスと、主に4つの事業を展開している。

 Coltの事業の特徴は、欧州の42の都市で独自のメトロエリアネットワークを展開している点にある。独自の光ファイバー網で欧州地域の2万棟のビルを結んでおり、欧州で最大規模となる400強のデータセンターと接続している。国ベースではなく、大都市を結ぶシームレスなネットワークにフォーカスしている。

 顧客は2万5000強で、金融やメディア、ゲーム企業などのほか、固定回線事業者、クラウドプロバイダー、モバイル事業者のバックボーンとしても使われている。

 ColtとKVHの事業内容や顧客ベースはよく似ている。Coltの規模がKVHの約10倍というだけでほぼ同じだ。実は私はKVHの非常勤の取締役会長も務めており、両者の事業や戦略を把握する立場にある。

KVHを買収する目的は。ColtとKVHはいずれも米フィディリティグループの子会社だが、フィディリティの意向が大きかったのか。

 株主からのプレッシャーは特になかった。むしろ大分前から顧客から、グローバルにシームレスなサービスを実現してほしいという要求があった。例えばKVHの日本のユーザーからは、欧州も含めたシームレスなサービスに対する要求が強かった。今回の買収によってユーザーは、グローバルでシームレスなサービスを享受できるようになる。

 ビジネス面でのメリットも大きい。アジア太平洋地域のICT市場は年率12%成長している。KVH自体も7%成長している。地理的にColtとKVHの事業は補完的であり、Coltにとっては成長著しいアジア太平洋地域でビジネスを拡大できる形になる。株主の利害にもマッチしている。従業員にとってもグローバルなキャリアを積む機会になるだろう。さらにはColtとKVHのマネジメントチームはお互いをよく知っており、統合のリスクも低い。

 このように今回の買収は、全てのステークホルダーにとってメリットがある。素晴らしい機会が生まれる案件だと考える。

 実際の買収は、12月16日に開催される臨時株主総会を経ての手続きとなる。

今回の買収で、グローバルでシームレスなサービスを提供する体制はほぼ整ったと考えているのか。

 大半の金融関係の都市のカバレッジはできているが、北米では自身の設備ではなくパートナーシップを組んでカバーしている。ニューヨークとボストン、シカゴ、ニューアークという金融関係の4大都市をカバーしているが、今後はさらにカバレッジを広げていきたい。

今後のColtとKVHの統合計画について教えてほしい。

 後ほど詳細な計画を公開予定だが、両社は多くの面で類似の技術を採用している。例えばSDN(Software-Defined Networking)関連技術としては、両社ともに米Cyanの技術を活用しており、イーサネット機器についてもほぼ同様だ。ERPについても両社で米Salesforce.comを利用しているなど共通だ。ビジネスサポートシステム(BSS)としては、例えば複数の国で対応できる課金システムをグローバルで利用している。

 何よりも大事なことは、ユーザーのフォーカスを失ってはいけないことだと考えている。今後、6カ月くらいで運営の統合を進めていきたい。

 日本のユーザーは、世界で最も高いサービスレベルを求める。海外のサービスも日本のユーザーが求めるサービスレベルに合わせていきたい。

 今回の両社の統合によって今後2年間で、毎年OPEXは約610万ユーロ、CAPEXは約240万ユーロのシナジー効果が生まれると考えている。

競合相手はグローバルなネットワーク、データセンターを持つ大手通信事業者になるのか。

 大手通信事業者は、例えば自身のホームマーケット以外でビル間の接続などはできていない。それは真のグローバルサービスとは言えない。グローバルマーケティングとは言えても、グローバルインフラとは言えないのではないか。

買収完了後、ブランドは変わるのか。

 ブランド名については現在、ユーザーにもヒアリングしながら検討している最中だ。ブランドもそうだが、何よりもグローバルに一つの会社でオペレーションできることが重要と考えている。

[プレスリリース:Colt、アジアに拡大するためKVHの買収予定を発表