第二次世界大戦後、欧州で起きた最悪の紛争と呼ばれる「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争」。1992年から3年半、ユーゴスラビアから独立したボスニア・ヘルツェゴビナで戦闘が繰り広げられた。同紛争は全世界から注目を集め、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府の支持が拡大。逆にセルビア系住民に非難が集中した。

 このとき、暗躍したのがボスニア・ヘルツェゴビナ政府が契約した米広告代理店ルーダー・フィンのジム・ハーフ氏だった。このときのもようを描いた書籍『戦争広告代理店』は、タイトルでこそ「広告」とうたっているものの、描いている世界は「PR」。PR業界で働く人にとって、いまだに支持を受け続けている一冊だ。

 PRの仕事をハーフ氏はどうとらえているのか。米大統領選をPRの観点からどう見ているのか。話を聞いた。

(聞き手は原 隆=日経FinTech


撮影:陶山 勉
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あなたはPRという仕事をどうとらえているのか。

 私はジャーナリストとしての教育を受けている。そしてジャーナリストには多種多様な仕事がある。コンテンツプロバイダーであり、コラムニストであり、エディターであり、時にはストレートニュースを書くこともある。ジャーナリストとしてのトレーニングを受けていることが私にとって、非常に役に立っている。私も企業の仕事をしたこともあれば、ワシントンD.C.で政府関係者や政治家と一緒に仕事をしたこともある。つまり、PRという仕事はジャーナリストと共通性があり、多様性もあるということだ。

 国と企業をPRするに当たり、根底の部分で共通するのはジャーナリズムだ。そして、異なるのはオーディエンスであり、マーケットということになる。当然、これらが異なればメッセージも異なるし、ストーリーを語るメディアも異なってくる。メッセンジャー(スポークスパーソン)も異なるし、指標も計測の仕方も変わる。

 つまり、マーケット、メッセージ、メディア、メッセンジャー、メトリックスの五つの部分が重要という点では企業も国も同じだが、それぞれのターゲットが異なるということだ。政府にとっては選挙に勝つということが目的かもしれないし、企業にとっては製品を売ることが目的かもしれない。目的によってこの五つが変わることになる。

 PRという仕事は好奇心があり、世界に関心がある若者にとってはまたとない仕事だ。もちろん、みなが就ける仕事ではない。だが、とても価値のある仕事だし、社会に対してとても重要な貢献ができる魅力ある仕事だと思っている。

現在、繰り広げられている米国大統領選をPRの側面から分析してほしい。

 共和党のドナルド・トランプ氏はマーケッターとして非常に優れている。彼はテレビの経験もあり、ショーの経験もある。だからこそ短い言葉で的確に自分の考えを述べるのがうまい。一方、民主党のヒラリー・クリントン氏はハードワーカーで、知的だ。そして学術的な側面も持つ。非常に細かいところまで目を配る。

 あらかじめ言っておくが、私自身、自由主義、自由市場を支持しており、必ずといっていいほど共和党候補を支持してきた。だが、トランプ氏とクリントン氏を比べ、どちらが大統領としての資質を持っているかと言われれば、クリントン氏だ。トランプ氏は歴史上、最も資質のない候補者だと思っている。

 米国の有権者の6割近くが彼が候補者であることをとても恥ずかしく思っているし、なぜこんなことが起きえているのかについて語りだせば、一冊の本が書けるほど話したいことは多い。

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