写真現像機で世界トップシェアメーカーのノーリツ鋼機は2009年、新規分野の農業事業を担う会社としてNKアグリを設立した。社員数7人、農業経験者ゼロで事業を開始。設立から3年かけて、土を使わない水耕栽培によるレタス栽培の事業化に成功した。現在は約40社の量販店に各種野菜を流通するまでになった。同社は2014年5月にサイボウズの業務アプリケーション開発用のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)である「kintone」を導入した。野菜の収穫量や需要に関する情報をクラウドに蓄積し、需給調整の精度向上に役立てているという。同社のICT利用について聞いた。

(聞き手は井原 敏宏=日経コンピュータ


NKアグリの三原洋一代表取締役社長
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農業経験者が全くいない中でどのように事業化を成功させたのか。

 約3000坪の自社工場で太陽光を利用したレタスの水耕栽培を始めた。最初は温度、湿度、日射量、肥料の使用量などに関するデータをセンサーで収集していった。そもそも農業に関するノウハウがなかったため、データを取るしかなかった。

 データの傾向を読み取ることで、収穫量をある程度予測できるようになった。今は誤差5%以内の歩留まりで収穫できるまでになっている。

 設立後3年かけてレタス栽培の事業化を実現した。現在は全国40社のスーパーで販売している。4年目からは農家と提携して、ほうれん草や水菜の生産も始めた。2015年10月には機能性成分のリコピンを多く含むニンジン「こいくれない」も出荷予定だ。

kintoneを導入した理由は何だったのか。

 全国の提携農家やスーパーに社員が出向くため、出張が多かった。それまではExcelで出張や営業の報告を管理していたが、限界を感じていた。

 ただ、ベンチャー企業として事業を始めたこともあり、ITに関する投資になかなか踏み切れなかった。そんな中、kintoneのデモを見る機会があり、費用が安い点に魅力を感じた。

 2014年5月にkintoneを導入し、その後3カ月で約40の業務を移行した。社内にはIT経験者もいなかったが、各個人が操作に悩むことなく必要と思う業務アプリを次々と作っていった。月額利用料は1万5000円程度で済んでいる。

導入の効果をどう感じているか。

 kintoneで作成したアプリを使い、生産現場の収穫量とスーパーが求める需要量を共有できるようにした(写真1)。出張中や移動中の社員もスマートフォンからアプリを使って、いつでも情報を閲覧し、コメント機能を使って議論を交わせるようになった。

写真1●kintoneで作成した収穫量の実績などを入力するアプリ
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 情報共有のスピードが上がったことで、生産現場と販売担当の需給調整の精度が劇的に向上した。この結果、2015年の自社工場での販売ロスは0.04%まで下がっている。

 パッケージソフトと違って、後から自分たちで必要な項目などをカスタマイズできるのもメリットだと感じている。栽培する野菜の品目によって、収穫量に影響するデータの種類は異なるからだ。

 初めは多くの種類のデータを取るが、各品目で収穫量に影響しやすいデータを判別できた時点で、不要なデータの項目を削除する。kintoneの場合、入力するデータ項目の削除や追加も簡単だ。

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