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量子暗号は銀の弾丸にあらず(中)

2017/11/29

Doug Drinkwater CSO

QKDの用途

 QKDは、東芝、米Qubitekk、スイスID Quantiqueなどのベンダーが手がけており、既に実用化されているとWoodward氏は言う。だが、QKDの装置は依然として高価だ。それに、既存のネットワーク上で運用できる耐量子計算機暗号(量子コンピュータでの解析に耐えうる暗号)とは違って、独立したインフラが必要となる。

 この部分で競合を出し抜いて、QKDを実用化に近づけたのが中国だ。2017年9月、オーストリアと中国の科学者が、量子暗号を使った初のビデオ通話の実験に成功した。従来の暗号化手法に比べて「少なくとも100万倍安全」だという。この実験は、中国が量子通信の実験用に打ち上げた人工衛星「Micius(墨子)」を使い、ウィーンと北京との間で、量子もつれ光子ペアを高速に伝送した。

 Woodward氏は、公開鍵暗号を使うあらゆるものにQKDを適用し得るとしたうえで、中国がQKDに興味を持つ理由の1つとして、物理的に安全だという確信が持てたら、米国家安全保障局(NSA)や他国に対する防御に使えるという点を挙げる。楕円曲線暗号に対する攻撃を踏まえたうえで、同氏はQKDについて、「バックドアも巧妙な数学的トリックも起こり得ない。物理学の法則を基盤としており、数学的法則よりもずっとシンプルだ」と話す。

 最終的には、政府や金融機関のほか、ハイエンドの用途でQKDが使われるようになるとWoodward氏は予想する。「現時点で装置を発売している企業もいくつかあり、動作はするが、値段が高い。しかし、いずれ安くなることも考えられる。おそらく、まずは銀行や政府などの高度なセキュリティで採用されるだろう」

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