米ウーバーテクノロジーズなど新興勢に押され、危機を迎える世界のタクシー業界。日本でも大手の第一交通産業が中国の滴滴出行と組むなど、動きが出てきた。海外勢に立ち向かう日本交通の川鍋一朗会長へのインタビューを前後編でお届けする。前編では配車アプリや人工知能(AI)による需要予測など独自のIT戦略で海外勢に立ち向かう真意を尋ねた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ


日本交通の川鍋一朗会長
川鍋 一朗(かわなべ・いちろう)氏 1993年慶応義塾大学経済学部卒業。1997年ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院MBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て2000年に日本交通入社。2005年、同社社長とIT子会社日交データサービス(現JapanTaxi)の社長に就任。2015年日本交通会長。東京ハイヤー・タクシー協会と全国ハイヤー・タクシー連合会の会長を務める。(写真:村田 和聡)
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AIによる需要予測などITを積極的に活用するのはなぜですか。

 そうしないと生き残れないからです。スマートフォン(スマホ)によって乗客の位置が分かるようになり、タクシー業界に地殻変動が起きました。

 以前のタクシー業界は法律や規制に基づいて日々の運行サービスを着実にこなすオペレーション業務が生業でした。ところがITが進化したことで様々な創意工夫ができるようになり、乗客とタクシーのマッチングや料金の決済といった分野にIT企業が参入してきました。

 当社は2011年に配車アプリの提供を始めています。当初はタクシーを呼んでもらうバリエーションを増やした程度と考えていました。地殻変動だと気付いたのは2013年に米国のシリコンバレーを訪れたときです。

 現地では米ウーバーテクノロジーズや米リフトなどのライドシェアサービスが勃興していました。提供しているサービスは本質的には自動車を使った移動であり、タクシーと変わりません。けれども乗客へのアプローチ方法が全く違う。サンフランシスコの空港でアプリを使って、本業を半分持って行かれたと感じました。

ITを活用しないと死ぬと思った

 帰国後1年くらいはためらっていましたが、IT活用に本気で取り組まなければいけないと決断しました。日本交通の社長に就任して10年目の2015年10月、社長を(現任の知識賢治氏に)譲って私は会長に退き、2015年に社名と役割を変更したIT子会社であるJapanTaxiの社長に専念しました。

 タクシー会社として手を打たなければ、売り上げや利益の半分以上をIT企業に持っていかれかねない。言葉は悪いですが、ITを活用しなければ死ぬと本当に思ったんです。

タクシー会社の社長と兼務し続けることは考えませんでしたか。

 それは無理です。アプリ開発会社とタクシー会社の文化は全く違いますから。例えるなら米国人と日本人くらい違います。就業規則も報酬体系も両社で別々にしています。

アプリ開発を外注せずに子会社で内製するのはなぜですか。

 商売の半分がITになってしまった以上、アプリ開発の能力を手放すわけにはいきません。開発組織を自社で持つと品質をコントロールできます。アウトソーシングした途端にコントロールがきかなくなり、思い入れがなくなります。大事な業務はアウトソーシングできません。

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