違法残業事件で有罪が確定した電通が、元総務省事務次官の桜井俊氏を2018年1月1日付で執行役員に起用することを11月29日に発表した。人気アイドルグループ「嵐」の桜井翔氏の父としても知られる同氏の役割は、内部統制機能全般の強化である。法令順守の徹底や働き方改革を急がねばならない電通は、IT活用も進める。

 「労働環境改革の最大の柱は社員1人ひとりの意識改革だ。過重労働をなくすには、働く時間を短縮しつつ効率良く働かなければならない。RPAはその有力な手段だ」。電通で働き方改革を推進する小栁肇ビジネスプロセスマネジメント局業務推進室長はこう話す。

 電通にとって働き方改革は最重要の経営課題だ。新入社員の過労自殺という痛ましい事件をきっかけに、電通は様々な手を打ってきた。まず2016年11月、石井直社長(当時)を責任者とした労働環境改革本部を設置し、過重労働問題の再発防止策を検討してきた。

 2017年7月には深夜残業をなくすなど労働関連法規を順守するための「社員の意識改革」や業務プロセスの改善による「総労働時間の短縮」などから成る「労働環境改革基本計画」をまとめ、順次実行している。

 一連の取り組みに先駆け、実は2017年春からRPAの導入を進めてきた。RPAはデータのコピー・アンド・ペーストなどPCを使った人手による定型作業を自動化する技術である。人がこなす定型作業を記録し、ソフトウエアのロボットに肩代わりさせることができる。労働環境改革基本計画では2019年度に社員1人当たりの総労働時間を2014年度より2割減らす目標を掲げる。その達成手段として、RPAを適用すると基本計画に盛り込んでいる。

電通が取り組む労働環境改革とRPAの適用計画
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 全社の全部門がRPAの適用対象だ。煩雑で手間のかかる「PC雑務」を抱える部署から改善のリクエストを受け付けるなどしてRPAの導入を全社で進める。2017年10月までに260件のPC雑務を自動化した。さらに上乗せして2017年末までに合計400件、2019年末までには約10倍となる2500件の自動化を目指す。

PCからの解放で月5000時間削減

 導入業務と成果の一例が約100カ所の放送局を対象としたアンケートの集計作業だ。同社は放送局からメールで届いたExcelシートの内容をPCに保存する作業にRPAを適用した。それまで担当者が3時間かけていた作業を、数秒で終えられるようになった。

 会計事務の月次処理や広告ターゲットの分析処理もRPAで自動化し、2017年10月までに月5000時間以上を削減した。会計事務に同社社員が費やしていた時間は1回当たり3時間。RPAを使って自動化した後も、会計事務の処理時間自体はシステムの処理性能などの制約もあり3時間のままで変わっていない。しかし「現場担当者がPCに張り付いていなければならなかった状況を解消できた」(小栁室長)。浮かせた時間を別の仕事に振り向け、社員の総労働時間の削減につなげた。

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