自民党と公明党からなる与党が3分の2を超える議席を獲得して幕を閉じた先の衆院選。選挙戦の裏で、民主主義を揺るがしかねないフェイク(偽)情報を見破る戦いが繰り広げられていた。主導したのは、ニュースアプリ「SmartNews」を運営するスマートニュースなどが立ち上げた協議会「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ:FactCheck Initiative Japan)」だ。

衆院選の偽ニュースをチェック

 スマートニュースの藤村厚夫執行役員は、大学教授やNPOの法人代表とFIJを2017年6月21日に発足させた。9月末に衆院が解散して総選挙が決まると、選挙関連の記事や政治家の発言、ネット上の言説について事実か否かを確認する「総選挙ファクトチェックプロジェクト 」を始めた。BuzzFeed Japan、Japan Indepth、ニュースのタネ、GoHooなどのニュース関連サイトが参加した。

 FIJは独自に設けたファクトチェックの暫定ガイドラインを基に、プロジェクトに参加するメディアが検証・執筆したファクトチェック記事の要約をサイトに載せていった。SNSや執筆者不明の記事を通じて流布するネット上の言説についても、ガイドラインに沿って内容を検証。「不正確」「根拠なし」などと判定した。選挙終了までに、計17本の要約を掲載した。

 立憲民主党Twitter『フォロワーを購入』は本当か?――こう題したファクトチェック記事では、Twitterアカウントのフォロワーが偽アカウントかどうかを専用ツールで分析した。結果は他の政党と大差ないとして、疑惑には根拠がないと判定した。

 「ネット上を流れるニュースは時間つぶしの手段という段階から、社会の断絶を生み、果ては民主主義を壊す段階にまで来ている」。藤村執行役員は偽ニュース対策に動く理由についてこう語る。偽ニュースに対抗するため、何が必要か。藤村執行役員と松浦茂樹メディアコミュニケーション担当ディレクターに聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ


FIJの立ち上げに参画した理由は。

写真●藤村厚夫執行役員 (右)と松浦茂樹メディアコミュニケーション担当ディレクター(左)
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藤村氏 スマートニュースは設立当初から、アルゴリズムを通じて高品質かつ多様なWebコンテンツを選び出し、ユーザーに届けることを目標にしている。

 その点で編集や編成の部門は持っておらず、コンテンツは人手を介さず自動で選択している。ただ、低品質なコンテンツについては人の目を介して判断して表示順位を落とす必要があり、品質管理チームが担っている。

 従来であれば、ステルスマーケティング記事など明らかに低品質な記事を落とすことができれば良かった。それがここ1~2年ほど、巧妙に作られ、洗練された「高品質」な偽ニュースが出回るようになった。

 (ポータルサイトやニュースアプリといった)ニュースの流通を担う事業者には、悪質な記事をせき止める使命がある。情報の作り手、配り手、読み手それぞれが、偽ニュースに対する抵抗力、抑止力を備える必要がある。

 スマートニュース単体で偽ニュース対策に取り組もうとしていた時期もあった。だが、我々単体では十分な対策は取れない。そこで、ニュースの真偽を判定する「ファクトチェック」を実施する外部組織と連携することを考えた。

「自社だけで対策する」から「外部との連携が必要」と方針を転換するきっかけは何だったのか。

藤村氏 やはり2016年の米大統領選で目にした事態は、我々にとって重いものだった。

 米大統領選中に出回った偽ニュースは、非常に洗練された手法で製作され、拡散されていた。ネット広告収入などの収益狙いに加え、国家による政治介入の可能性さえある。いずれにせよ、技術の面でレベルが高く、簡単には偽と見破れないコンテンツが出回った。

 米大統領選をきっかけにした国民同士の対立も、偽ニュースの拡散を助長した。「相手を倒すためであれば、嘘の情報が流通するのもやむなし」との雰囲気すらあった。ニュースという存在が、人々の時間つぶしや楽しみを越え、国家の断絶を生み出すきっかけになった可能性がある。

 これを機に、我々は偽ニュースを改めて深刻に捉え直した。「民主主義が機能するためには、多様な情報を届ける必要がある」というのが、今のスマートニュースの考え方だ。仰るように、この1年で我々の考えは大きく変わったと言えるだろう。

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