中堅ベンダーでプロジェクトマネジャーを務める山本正弘さん(仮名、39歳)はかつて、部下の中で中心的な存在であるAさんにひどく嫌われ、それが原因でチームを崩壊させてしまった苦い経験を持つ。

 それは数年前のことだった。山本さんは自分が昇進できたら後任に据えたいと、Aさんに期待を寄せていた。そのためAさんに多くの仕事を与え、本来は山本さんがやるべき仕事の一部まで、Aさんに任せていた。

 ところがあまりに仕事が多すぎたAさんはパンク状態に陥った。Aさんは他のメンバーとの不公平感から、次第に山本さんへの反発を強めていった。

 さらにAさんは、他のメンバーとの会話で公然と、山本さんへの批判を繰り返すようになる。そんなAさんに感化され、山本さんを嫌うメンバーが増えていった。部下の大半が、山本さんの指示に素直に従わなくなるまでそう時間はかからなかった。もはや山本さんと部下の信頼関係は完全に崩れ、修復不可能だった。会社からマネジメント能力が欠けていると見なされた山本さんは、まもなく更迭された。

部下は上司の意図を理解していない

 皆さんは、このエピソードをどう考えるだろうか。上司である山本さんの視点に立つと、部下のAさんに問題があるという見方ができる。山本さんは、Aさんの成長を期待して、多くの重要な仕事を与えた。Aさんはその期待に応えられなかった。

 しかしAさんからすれば、山本さんは不公平なアサインをする上司だ。それによって自分はつぶされかけたと感じていた。

 このすれ違いはなぜ生まれたのか。原因は山本さんにある。それだけの仕事を任せる理由を、Aさんに一度もきちんと伝えたことはなかった。

 リーダーシップに詳しい教育コンサルタント、ナレッジサインの吉岡英幸さん(代表取締役)は「上司の気持ちは部下には伝わりにくいもの」と指摘する。部下のために「よかれ」と思ってとった言動でも、ネガティブに受け取られることは少なくないという。

上司の気持ちは部下に伝わりにくいもの
部下のために「よかれ」と思った言動でも、ネガティブに受け取られるケースは少なくない。部下に嫌われ無用な亀裂を生まないためにも、上司としての言動に気を付けたい
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 別の例を挙げよう。部下が上司である自分のもとに相談に来たとき「君はどう考えているのか」と聞くことがあるだろう。部下に考える癖を付けさせ、成長を促す言動である。

 ところが吉岡さんによると、最近はこれが「丸投げ」と部下に捉えられるケースがあるという。相談された側の上司が、考えることを放棄して突っ返していると受け取るのだ。この場合、「私はこう思っているんだけれども、君はどう考えているのか」と返すのが上司の取るべき言動である。

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