本連載では、システム開発の具体的なトラブルを紹介しながら、失敗の原因と対策を明らかにする。今回は、システム開発トラブルの類型と、主な失敗の要因を説明する。特に「業務知識の不足」「パッケージの認識不足」は大失敗につながる。

 開発したシステムにバグが頻発する、利用部門が新システムを受け入れない、開発費が当初予算を大幅に超過した、納期遅れを繰り返した―― 。業務システム開発の現場では、失敗やトラブルが後を絶たない。

 深刻なケースでは、システムを発注したユーザー企業と、受注したITベンダーの間で訴訟に発展することもある。ひとたび訴訟になれば、双方が膨大なリソースを無駄に消費する。そこに勝者はいない。

 どうすれば、システム開発のトラブルや失敗を未然に防ぐことができるのか。本連載では、システム開発の典型的なトラブル事例をひもときながら、失敗の原因と回避策を解説する。

 第1回はその前座として、システム開発トラブルの類型と、トラブルが発生する主な理由について説明する。

現場で何が起きているのか

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2016」によると、システム開発の工期、予算、品質は、10年ほど前と比べてそれぞれ改善が見られる。

 だが規模の大きい500人月以上のシステムでは、工期遅れは44.5%、予算超過は39.6%、品質不満は29.2%と高止まりしている()。多くのシステム開発で、ユーザー企業が工期、予算、品質に納得していない状況があるのは明らかだ。

図 500人月以上のプロジェクトにおける年度別システム開発状況
納期・予算・品質へのユーザー企業の不満は依然高止まり
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 失敗したプロジェクトがたどる道はいくつかある。システムは完成したが、実際には使用されないケース。いずれかが失敗の責任を認め、示談金を支払うケース。そして話し合いでは解決できず訴訟に至るケースだ。

 訴訟が提起されれば、判決が確定するまでに数年、ときには10年近くかかる。企業の評判への影響を含め、ユーザー企業、ITベンダー共に大きなダメージを負うことになる。

開発失敗の5大要因とは

 日経コンピュータ2016年10月13日号の特集「『動かないコンピュータ』裁判を読み解く」によると、ユーザー企業とITベンダーが争った11の訴訟における開発トラブルの類型は、パッケージ導入問題が6件(50%超)、追加開発に関わるトラブルが8件(70%超)、データ移行に関わるトラブルが4件(40%弱)となっている。パッケージ導入と追加開発のトラブルが重複しているシステムも5件あった。

 これらの失敗原因をつぶさにみていくと五つの要因が浮かび上がってくる()。自社の業務および業務管理に関するユーザー企業の知識が不足していること、業務パッケージソフトウエアの適切な活用法についてユーザー企業とITベンダー双方の認識が不足していること、発注者(ユーザー企業)と受注者(ITベンダー)のコミュニケーションが不足していること、プロジェクト管理に関する知識やスキルが不足していること、新しいITを使いこなす技術力が不足していること、である。

図 システム開発を失敗させる5大要因
「業務知識」と「パッケージ活用」が落とし穴

 今回は、具体的なケースに触れる前に、五つの原因のうち、業務知識・業務管理知識不足、パッケージ活用の認識不足の2点を中心に、筆者の体験を交えて解説しよう。

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