世界中で盛り上がりを見せるICO(Initial Coin Offering)。ICOを実施するプロジェクトの多くは、「Ethereum(イーサリアム)」を基盤技術として活用している。イーサリアムの提唱者で、実際にICOを実施した「OmiseGO」のアドバイザーも務める23歳のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、「ICOには多大なメリットがある」としながらも、「成熟するまでに時間を要する」と話す。

(聞き手は岡部 一詩=日経FinTech


Ethereum 創業者のVITALIK BUTERIN 氏
(撮影:新関 雅士)
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 多くの人が、ICO(Initial Coin Offering)のことを迅速に資金を獲得できる手段の一つと考えている。私自身、ICOには多大なメリットがあると認識している。OSS(オープンソースソフトウエア)を巡る課題の解決につながる可能性があるからだ。

 OSSの開発は、マネタイズが非常に難しい。例えば2014年、「OpenSSL」に脆弱性が見つかったことは記憶に新しい。このOSSは、米Googleをはじめ主要なWebサイトが使っていたソフトウエアライブラリだった。騒動で明らかになったのは、たった二人のボランティアと非常に少額の資金でOpenSSLが運用されていたという事実だ。世界中が依存するOSSだったにもかかわらずだ。

 OSSは多くの人に利益をもたらすものだが、一人ひとりのユーザーが享受するのはわずかな部分。個人が対価を支払うほどのインセンティブが働きにくい。これは、あらゆる場所で見かける問題だ。OSSは世界中で利用されているが、その多くは資金を巡る問題を抱えながら、ボランティアによって支えられている。

 その点、暗号通貨のアプリケーションに携わる人々は、より容易に資金を得られることを知っている。それがICOだ。ネットワークを作り上げ、トークンを販売できる。人々はICOがソフトウエアを開発するための一つの道であり、最終的にはマネタイズやビジネスモデルの構築にもつながると見ている。だからこそ、たくさんの資金を得たい、プロジェクトを始めたいと望む人々が、この領域に殺到しているわけだ。

 私自身、「OmiseGO」のアドバイザーを務めている。OmiseGOを簡単に説明すると、暗号通貨や伝統的な通貨などの交換を担う非中央集権的なネットワークだ。いかなる国や企業にもコントロールされていないネットワーク上での交換は信頼できる。国が法律を変えることもなければ、プラットフォームが突然ルールを変えたり、サービスを終了したりするといった心配がないからだ。

ICOそのものが目的になっている

Ethereum 創業者のVITALIK BUTERIN 氏
(撮影:新関 雅士)
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 ICOには多大なメリットがあるとはいえ、同時に多くのリスクもある。特に二つの主要なリスクに注目すべきだろう。

 まず、価値あるプロジェクトとそうでないものとの違いを見極める豊富な経験を持つ人々が少ないこと。ICOのマーケットはまだ成熟していない。多くのプロジェクトが巨額の資金を調達している姿を目撃しているだろうが、私の見立てでは恐らくほとんどのプロジェクトが調達に足る価値を持っていない。

 もう一つは、ICOを実施するプロジェクトの多くが、ICOそのものを目的にしているように思えることだ。彼ら彼女らは、プロジェクトの内容にコインを含めなければならない。コインを売らなければならないからね。しかし、コインを発行することが理に適っていないプロジェクトも少なくない。

 今のところ、コインが根本的な価値を持たないICOでも、ピリオドは打たれておらず、価格も上がっている。ただし中期的な視点に立てば、1~3年のうちに多くのプロジェクトは失敗に終わる。価値のあるプロジェクトにとってICOは良いツールだが、すべてに当てはまるわけではないんだ。

 イーサリアムが、ICOを実施する際の最大のプラットフォームになっていることはポジティブな面も多いが、リスクもある。ポジティブな側面としては、イーサリアムにより多くの人々が集まることで、良いアプリケーションが生まれる可能性が高まる点だ。

 一方で、プラットフォームを巡る評判についてリスクも抱えることになる。例えばICOで巨額の調達をした創業者が、資金を持ち逃げするかもしれないからだ。

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