今回のPMBOKガイド第6版が取り込んだアジャイルは、変化・変更を積極的に受け入れるという考えに基づいている。最近増えてきた、ITを活用するビジネスの企画・開発のプロジェクトは、激しい要求の変化に迅速に応える必要がある。そこでPMBOKガイドでも、これらの手法を取り入れた。プロジェクトマネジャーに対して、アジャイル手法による変化への適応を求めた歴史的改訂といえる。

 以下では、PMBOKガイド第6版におけるアジャイル関係の内容を見ていく。

日本発の考え方に欧米の開発現場が注目

 そもそもアジャイル開発のアプローチは、元は日本発の考え方である。『ハーバード・ビジネス・レビュー』が1986年に掲載した論文「The New New Product Development Game」にその端を発する。野中郁次郎博士と竹内弘高博士が、1970~80年代の日本企業の成功要因を具体的に解説したものだ。

 同論文では、日本の製造部門では現場主義が主流であること、また現場の仕事の進め方がリレー方式ではなく、全員がスクラムを組んで一丸となって進めでいくラグビー方式だと紹介する。さらに現場で培ったノウハウを全員が共有し、スキルを高めることで組織としての成長を達成していると説いた。

 野中氏らの論文は、ソフトウエア開発の事例を取り上げたわけではなかった。ところが、欧米のソフトウエア開発の実務家たちを大いに啓発した。その結果、アジャイル型プロジェクトのバックボーンとして様々な書籍に引用されることになった。

 例えば、アジャイル開発の手法の一つ「エクストリームプログラミング(XP)」の考案者であるケント・ベック氏は、1999年に発行した著書『エクストリームプログラミング』の中で、プロジェクトマネジメントの例としてこの論文を参照している。同書の副題は「Embrace change(変化を抱きしめる)」。ソフトウエア開発の特徴である変更の多さに積極的に対応できる手法を提案している。

 ケント・ベック氏がXPを提案した後も、変更への対応に強みを持つ手法が次々と登場した。例えば、トヨタ自動車の現場改善手法を応用した「リーン」や「カンバン」、野中氏と竹内氏が論文で記述した「スクラム」から名を取った「スクラム知識体系」などの手法である。

 これらはいずれも、変化(変更)への迅速な対応や、ユーザーが特に求める機能を優先して開発し、部分的に納品することでビジネスに早く貢献することを目指している。これらの手法をアジャイルと総称しているわけだ。

 2001年にはケント・ベック氏らがアジャイル開発手法の心得というべき「アジャイルマニフェスト」を発表した。さらに、アジャイルマニフェストの普及目的や、アジャイル実務家相互の情報交換の場としてアジャイルアライアンスを組織化した。このようにして一連のアジャイルの手法は、ソフトウエア開発の現場で次第に浸透していった。

アジャイルは「適応型」、ウォーターフォールは「予測型」に

 PMBOKガイドを発行する米PMIも、アジャイルの動向には以前から注目しており、対応を進めてきた。2015年には「PMBOKガイド第5版 ソフトウェア拡張版」を米国のIEEE Computer Societyとの協業で発行。その中でアジャイル開発を取り入れ、アジャイル開発における進捗を表すツール「バーンダウンチャート」や、開発スピードを表すツール「ベロシティー」などについて言及した。ただし、この拡張版の時点では、PMBOKガイドの従来の枠組みを引きずった部分が少なくなかった。

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