消費者のニーズは「モノ的な価値」から「コト的なベネフィット」へとシフトしている。これからのビジネスはこの期待に応えるものでなくてはならない。消費者の視点でユーザーベネフィットを追求する。そしてその実現を支えていくのが、テクノロジーである。

 さまざまなテクノロジーの中でも、大きなインパクトを持つのがIoT(Internet of Things)とAI(人工知能)である。IoTはモノから膨大な「データ」を吸い上げ、そこに意味を持たせて分析・評価の対象とした「インフォメーション」を生成する。そのインフォメーションをAIが発展させ、意思決定をする源泉となる「インテリジェンス」へと昇華させる。これにより、インテリジェンスの抽出が容易になっただけでなく、従来人間が行ってきた判断・行動までをもコンピュータが自律的に行い得る時代になってきた。

IoTとAIの自律化が進み、車や機体をデザインし橋を作る

 IoTの浸透とAIの成熟で自律化は予想以上に進んでいる。実際、車体につけたセンサーで走行時に車体にかかる負荷などのデータを取得し、そのデータを用いてAIが車体をデザインするということが行われている。

 エアバス社の次世代飛行機のコンセプトモデルもIoTとAIに支えられている。エアバス社は新たなテクノロジーを利用するコンポーネントとして、機内を仕切るパーティションを3Dプリントで実現している。パーティションは格子構造ながら、強靭(きょうじん)かつ軽量に最適化され、材料も少ないデザインを実現した。2016年度には安全性などの実験が終わっており、航空局などの許可が出れば、2018年ごろからは実装が始まるという。

 オランダ・アムステルダムのベンチャー企業は世界初の試みとして、自立的に建築する橋の実現を目指している。街を流れる運河のほとりにAIと3Dプリンターを実装したロボットを配置し、その場で自動的に橋を架ける。ロボットは自らの足場も作りながら作業を進める。AIが自立的にデザインするので、従来の橋とはまったく異なるデザインの橋が出来上がるという。

 このように膨大なデータがもたらされ、なおかつIoTやAIが活躍するようになると、テクノロジーが自律的に“Hardfacts”(より確かな事実)を生み出していく。そこで重要になってくるのが、オリジナルの「着想」を得ることだ。キーワードは“Crack the Shell”。固定観念に縛られずにゼロベースで考え、“思考の殻を打ち破る”ことである。

お客様と共に考え活動し、不可能を可能に変えていく

 成功した好例が、カーシェアリングだ。世界中でサービスが普及し、米国ボストンでは45万人が7分以内で、いずれかの車両にアクセスできる環境にあるという。日本でも15分単位でいつでも、至るところから利用できるようなサービスが広がりつつある。将来的に利用者の運転レベルや運転履歴、需給状況や配車状況によって、料金がリアルタイムに変動するダイナミックプライシングも可能になるという。

 なぜカーシェアリングがここまで普及し、なおかつサービスは進化を続けているのか。それは人々のニーズの変化を的確に汲み取ったからだ。人々が求めているのは、快適な移動手段であって車を持つことではない。これを「自由な移動手段のためには車を持つことが必要だ」という従来の枠組みの中で考えてしまうと、真のユーザーニーズはなかなか見えてこない。

 ロールス・ロイス社は、固定観念に縛られずに、航空機エンジンの従量課金モデルを開始した。航空会社は使ったエンジン推力と時間に応じて料金を払う。高額な初期投資がいらず、小規模なLCC(格安航空会社)でも導入しやすい。

 フィリップス社は米国ワシントンD.C.の公共駐車場で完全成果報酬型の照明サービスを提供している。初期費用なしでLED電球への交換を行い、電力削減額に応じて料金を支払うというものだ。

 日本企業も世界で戦うためには“Crack the Shell”を目指し、その実現のためにどんなテクノロジーを活用していくかをセットで考えることが重要だ。この活動を支援すべく、NTTデータは5年前から「NTT DATA Technology Foresight」を毎年策定している。膨大な情報を政策、経済、社会、技術という4つの側面から分析し、近未来の情報社会と技術トレンドを予見する。新たなビジネスをお客様と共に考える活動も展開している。昨年は300件以上の個別セミナーやワークショップを開催した。

 「不可能を可能にする唯一の方法は、それを可能だと信じること」。これは「不思議の国のアリス」の映画の中でアリスが語っている言葉だ。

 私たちが住んでいる世界は決してワンダーランドではないが、昨日までは不可能だったことが、今日は可能になるということが起こり得る。NTTデータはオリジナルな着想の取得とその実現に向けた活動を支援し、「不可能を可能に変える」をお客様と共に形にしていきたい。

出典:日経コンピュータ 特別レポート版
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。