世界は急速に変化している。企業活動も単なる事業継続にとどまらず、情報技術やデジタルを駆使し、時にはビジネスモデルの変革をも求められる時代が到来した。イノベーションの重要性がますます高まっているのだ。

 そうした中、最近はベンダー主導に代わる新しいITの潮流として「オープンソース」に注目が高まっている。イノベーションの起点を探るにはどうすべきか。それをオープンソースの観点から考察していきたい。

イノベーションの創出には3つのポイントが欠かせない

 レッドハットはお客様と共にビジネスイノベーションに数多く取り組んでいる。ビジネスイノベーション創出には3つのポイントが欠かせないと考える。

 1つ目が「変革の原動力としてソフトウエアを使う」ことだ。ネットスケープの開発者であるマーク・アンドリーセンは2011年に「ソフトウエアが世界を飲み込む」と予言した。古いビジネスモデルに基づいた産業がソフトウエアの登場によってビジネス転換を余儀なくされ、その波に乗れない企業はおのずと衰退へと追い込まれる。イノベーションを実現している企業のほとんどがソフトウエアを中心としたビジネスモデルを構築している。

 その象徴がアマゾン・ドット・コムだ。1994年にオンライン書籍販売で事業を始め、その後ソフトウエアのテクノロジーをフルに使ってクラウド事業を立ち上げた。結果として既存の流通業界やIT業界の再編が加速していった。

 変化の予兆は日本でも起こり始めている。クラウド上で会計サービスを提供するマネーフォワードは、全国約2600社の金融機関とAPI連携を果たし、「オンライン家計簿サービス」を実現した。あっという間に会員数は500万を超え、急成長を続けている。

 2つ目は「外向きの発想」を持つこと。常にお客様に焦点を当て、外部の人材をも使って社内の意識改革を図る。米国小売り大手のウォルマートは20を超えるITテクノロジー企業を買収し、シリコンバレーに「ウォルマート・ラボ」を立ち上げた。外部から獲得した優秀な人材約2200名がそこで活動し、顧客視点に立ったマーケティングや物流システムのデジタル化を推進している。日本でも大手金融機関3行が揃ってCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)の設置を発表した。顧客利便性を追求する「お客様ファースト」に挑戦するのが狙いだという。

 そして3つ目が「PLANNING IS DEAD」である。長い時間をかけて用意周到な計画を練り、実行に移すというサイクルはもはや通用しない。一定のお客様や市場などターゲットを決めて、スピード重視でスモールスタートする。仮説とニーズとのギャップがあれば臨機応変に軌道修正していくのだ。

これから目指すべきはオープンソースイノベーション

 ビジネスを支えるITは、この3つを実現できるものでなくてはならない。その有力な道具立ての1つとなるのが、オープンソースである。時価総額世界トップ5の企業は1社の例外もなく、すべてオープンソースのアーリーアダプターであり、コアユーザーである。

 そのコミュニティは企業や業界の枠組みを超えて年々増加し、100万件を超えたといわれる。レッドハットはプロジェクトの目利きをしたうえで、約2000のコミュニティに人材を投入し、さまざまな分野で共同開発を進めている。そして成果物をパッケージングし、企業がミッションクリティカルな分野でも使えるレベルに品質を上げる。そのためのアプリケーションプラットフォームとして提供するのが「Red Hat OpenShift Container Platform」だ。

 すでに多くの企業で導入が進んでいる。オーストラリアのマッコーリー銀行はその1社だ。リーンスタートアップによる開発でモバイル端末向けに利便性の高いサービスを次々とリリースしている。世界的自動車メーカーのBMWもOpenShiftをベースにドライバー向けサービスの開発・提供に力を入れている。ドイツ銀行はOpenShiftを開発基盤とするITの内製化を進めている。アウトソーシングせずに自らが開発することで、サービス提供のスピードアップを図るためだ。2020年までに業務の85%をOpenShiftに移行することを目指す。開発のスピードアップが図れるだけでなく、ITインフラコストも7割削減できる見込みだという。

 レッドハットはこうした経験やノウハウを多くのお客様に提供し、ビジネスおよび、開発、運用担当者による一体的開発手法(DevOps)やITオートメーションの実現もサポートする。これらを加速する手段として、ボストンとロンドンに「Red Hat Open Innovation Labs」を開設した。今年中にシンガポールにも開設する。ここにアイデアを持ち込んでもらえば、オープンソースの専門家が一緒になって実現をサポートする。なお、この手法は日本でも利用可能だ。レッドハットはこれまでに培った技術と経験を総動員し、「オープンソースでつくるビジネスイノベーション」をお客様と共に推進していく。

出典:日経コンピュータ 特別レポート版
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