欧州委員会が発表した2016年度の「EU産業研究開発投資スコアボード」(世界のトップ2500社を対象にした研究開発投資の調査)によると、IT関連セクターのR&D(研究開発)投資額は、3年間で61%増の24兆7000億円。金額・伸び率とも、ほかのセクターを圧倒している。ITを活用した技術革新は、デジタルイノベーションという形で各業界の生産性向上に貢献しているといえる。

 ただしその一方で、業界構造を破壊的に変えるインパクトを持っていることにも留意する必要がある。つまり現在は、ITを「どう使うか」が一層重要な時代になったといえる。

AIやロボットなどの最新技術をPoCから実用段階へ

 NSSOL(新日鉄住金ソリューションズ)でも、デジタルイノベーションに関する取り組みが、PoC(概念実証)から実用段階に入っている。ここでは3つの事例を紹介したい。

 1つ目は、デジタルテクノロジーでヒトの能力にレバレッジをかける取り組みで、具体的にはコークス炉の建設作業の分析にUWB(超広帯域無線通信)を活用している。

 従来は建設現場を「目視」して、ストップウォッチで作業時間を計っていた。数値は手作業でPCに入力し、分析していたが、労力と時間がかかる上に限られた対象しか計測できない。しかも、データの整理・分析に長い時間を要する。このため、毎日のデータ計測は困難だった。

 こうした課題の解決に、UWBを使った屋内測位技術を導入した。作業員にUWBのタグを装着してもらい、現場に設置したセンサーで作業位置を自動計測する。これなら、長期間かつ多人数を同時に計測することが可能だ。今後は、機械学習技術を活用して、分析も自動化したいと考えている。

 2つ目は、ヒトとロボットの「協働」だ。NSSOLは業界の中でもいち早く、AR(拡張現実)の技術検証に取り組んできた。現在はARと位置認識技術を活用して、ロボットの自律走行実験を実施している。昨年8月からは研究所内で、ソフトバンクの「ペッパー」の自走検証を行っている。ペッパーには3次元センサーとROS(ロボット・オペレーティング・システム)を搭載したノートPCを装着しており、「この書類をAさんのところに持って行って」と問いかけると、Aさんのところまで行く。宮崎ブーゲンビリア空港では、ペッパーにマイクロソフトのヘッドマウント型PC「HoloLens」を装着した実証実験も行った。

 3つ目が、データロボット社の機械学習プラットフォーム「DataRobot」を活用して、ヒトとAIの役割分担を研究する取り組みだ。データ分析業務では、これまでデータの収集・加工からモデル作成やコーディングまでの作業が大きな負担となっていた。そこで、ここの部分をDataRobotで自動化することに取り組んでいる。

 DataRobotは1000種類以上のモデルを備えており、与えられたデータを機械学習で分析し、そのデータに適していると思われる30種類程度の予測モデルを抽出する。データサイエンティストが数日から長い場合には数カ月かけていた作業を数十分で完了させる。精度の高い予測モデルを組み合わせて、より精度の高い「アンサンブルモデル」を自動的に作成することも可能だ。

3つの領域でお客様のデジタル革新を支援

 日本は少子高齢化によって労働人口が急速に減少しつつある。デジタルイノベーションで生産性を大きく高めることは、どの企業にとっても喫緊の課題だ。

 IoTはモノをつなげる技術だが、NSSOLではヒトがIT武装してつながる「IoH(ヒトのインターネット)」にも、幅広い産業に大きな変革をもたらすと考えて取り組んでおり、IoTやIoHなどが高度に連携・協調する「IoX」というソリューションを提唱している。さらに、データ分析をクラウドで支援するのが「Data Veraci(ダータヴェラーチ)@absonne」だ。これはデータの生成・収集から蓄積、分析・可視化までの機能を備えたデータ分析統合環境で、膨大な投資になりがちなデジタルイノベーションを効率化するソリューションと位置付けられる。

 このほかにもNSSOLは、お客様の課題について問題意識を共有したり、テクノロジーの選択から現場への適用までを一緒に考えたりする組織をつくっている。これが、研究所の中に設置した「コラボレーティブ・デジタルイノベーション・センター」である。

 NSSOLは、お客様のデジタルイノベーションに、3つの領域で貢献できると考えている。(1)ITプラットフォームの提供、(2)高度人材による個別のビジネス共創・創出支援、(3)価値共創を始めるための場の提供──の3つだ。今後、世界中の企業がデジタルイノベーションに本格的に乗り出してくる。そんな時代に向けてNSSOLは、お客様とともに新たな価値を生み出す仕組みを考え、具現化するプラットフォームを創っていきたい。

出典:日経コンピュータ 特別レポート版
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