1996年、Linuxの管理ソフトを開発・販売する会社としてHDEを立ち上げ、21年になる。当社は5年ほど前、大きな変曲点を迎えた。そこで会社が多様性を身につけ、成長軌道に乗ったと言える。

国内では採用難のため人材を海外へ求める

 私たちが変曲点と位置付けているのは、2011年だ。東日本大震災が起こり、これ以降、多くの企業がオンプレミス(社内運用)の情報システムをクラウドに移行し始めた。そこで「東京の会社がシステムをこぞってクラウドに移動する時代が来る」と考え、まずは自社のクラウド移行を実践。そこで得た知見を「HDEOne」というサービスに集約した。

 オンプレミスからクラウドに移行しようとすると、セキュリティ対策をはじめとしてさまざまな課題が出てくる。HDEOneは、そのような課題の解決策を統合したサービスだ。この点がお客様に評価され、5年間に約3000社にご利用いただくまでに成長した。

 事業が伸びてくるのに伴って、新たな経営課題が浮上した。人材採用難だ。とりわけ、クラウドサービスを維持拡大していくための技術者の採用が極めて難しくなっていた。

 創業から16年、日本企業相手に日本人だけでやっていたが、2013年頃から国内だけでは求める人材の採用が難しくなってきた。そのためグローバル採用に踏み切った。現在では日本で働く165人のメンバー中25人が外国籍、新卒採用にいたっては8人中7人が外国籍だ。当然、賃金は“日本水準”である。

 アジア各国は概して、日本に比べて、労働人口が多い。例えばインドネシアの人口は日本の約2倍だが、若者に絞るとさらに差が開く。日本では10歳から29歳までの若者の数が2450万人であるのに対しインドネシアは8929万人と約3.7倍もいるのだ。また、ASEAN全体の人口は日本の約5倍だが、若者に絞ればなんと約9倍にも上る。こうした環境で採用活動をすれば、日本よりもむしろ、優秀な人材が採れるかもしれないと考えたのだ。

 グローバル採用を決めたものの、最初は何をしたらよいか分からなかった。そこで現地に行かないと話にならないと考え、各国の大学を訪問した。当社のビラを配るといったプロモーションを世界中で実施したのだ。

 そのときに改めて感じたのは、実は我々が思っている以上に東京が魅力ある都市だと思われていることだ。学生たちは、アニメ文化やオタク文化を通して、日本のことをすごくよく知っている。私たちの会社は渋谷にあるのだが、この立地も大きな競争力になることが分かった。

 そこで、「HDEグローバル・インターンシップ」というプログラムを実施した。これは簡単に言うと、「渋谷に就業体験においでよ」というプログラムだ。期間は6週間。渡航費や滞在費は全額当社負担、日本語不要・要英語とした。ここがポイントで、日本語ができる人に限定すると、母集団が恐らく100分の1程度に減る。「英語さえできればタダで東京に来られ6週間、就業体験ができる。休みの日は秋葉原にも行ける!」というプログラムにしたのはそのためだ。

 応募者は年々増えている。2014年、2015年、2016年と倍増のペースになっており、今年は3000人を超える見込みだ。

 6週間のプログラムを通して、卒業後にうちの会社に来てもいいなと思う学生でかつ、我々も来てほしいなと思う学生に対して内定を出している。

草の根レベルでダイバーシティーが推進される

 初めは、世界中から人を集めなければという必要性から始まった取り組みだったが、思わぬ副作用が生まれ始めた。世界中から人がやって来るので、今まで全く知らなかったことを社員たちが学んでいくようになったのだ。例えば、リトアニアでは日本と同じようにそば粉を使ったパンケーキを食べるとか、いろいろな文化や風習を知るようになった。そうして、おのずとダイバーシティーが推進されるという形になっている。

 典型的な例は、宗教の問題だ。ムスリムの社員が一定割合で入ってくるので、会議室を予約して1日5回の礼拝の時間をとっていたのだが、今では礼拝室を作っている。このほかにも、ムスリムのラマダン(断食月)に対しても、みんなで少し配慮するといったように草の根でダイバーシティーが推進されている。

 社内公用語を英語にすることにも取り組んだ。とはいっても、簡単なことではなく、一朝一夕に社員の英語力が伸びるわけではない。そこで、目標を達成するということよりも、いつかはペラペラに話せるようになるという目標に向かう努力をしていこうよと激励している。

 私たちは本当に小さい企業だが、労働力の維持拡大という課題は、日本全体が直面している課題でもあるのではないかと思っている。課題の解決方法は企業によって異なるだろうが、多様性を獲得すると、さまざまな変化への対応力が身につくことは間違いない。

出典:日経コンピュータ 特別レポート版
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