先日、アマゾン・ドットコムが1兆5000億円で高級食品スーパーを買収するという報道があった。このことが象徴するように、デジタル化の進展で業界の垣根がなくなりつつある。ウーバー・テクノロジーズやAirbnbに代表されるように、デジタルテクノロジーを武器に既存のビジネスを「壊す」企業も相次いでいる。

 私たちは今、かつてない変革の時を迎えた。このような時代の中で、日本ユニシスグループが何に取り組もうとしているのかをお話ししたい。

 日本ユニシスは、「Foresight in sight」というコーポレートステートメントを掲げている。先見性を武器にいち早くお客様や社会の課題をキャッチし、経験や常識にとらわれない洞察力で深く理解し知恵や発想、ICTを組み合わせ、お客様に最適なソリューションやサービスを提供。そして業界を越えたビジネスエコシステムをつくるのが目的だ。社会課題や未来のニーズを予見(foresight)した上で当社が触媒となり、お客様やサービス提供者、スタートアップ企業、公的機関や大学などと一緒に革新的なサービスを創出することを目指していく。

 現在、活動の一環として「人財改革」を推進している。エコシステムの触媒には、魅力的な人材が必要になる。「BePrincipal!」「Be Innovative!」「Be a Catalyst!」という3つのスローガンを掲げ、人材作りを育てていく。

 例えば社長の平岡は、私塾を開いた。以降、公募で集まった社員たちが、新しいサービスをつくろうと継続的に取り組んでいる。現在、提供しているのサービスのなかにも、この私塾の1期生がつくったものがある。

 私も「モーニングチャレンジ」と名付け朝8時に本社の1階にある喫茶店を借り切り、その時々で注目されている話題を自由に議論している。

イノベーションにつながる先端テクノロジーを発掘

 エコシステムを形成する上で、重要な役割を果たしているのがオープンイノベーション戦略だ。この戦略には、先端テクノロジーの発掘と、国内外の有望なテクノロジーへの投資という2つの取り組みが含まれる。

 先端テクノロジーの発掘のために、シリコンバレーに「NSSC(NUL System Services Corporation)」という現地法人を設立した。ここで最新テクノロジーの情報を収集するとともに事業機会を探っている。

 投資に関しては、我々は財務的なリターンを求めているわけではない。新しいシーズや新しいテクノロジーを発見して、それをお客様に持っていくことでエコシステムをつくることが目的だ。例えば、米国のフィンテックに関しては「Fintech Discovery Platform」というファンドに参画し、新しいテクノロジーを日本に持ってきている。国内でも、社会課題の解決に資するテクノロジーに投資するファンド「リアルテックファンド」やベンチャーキャピタルである「JAFCO」や「JICT(海外通信・放送・郵便事業支援機構)」に出資中だ。

 このほかにも、山形県鶴岡市と慶應義塾大学先端生命科学研究所が設立した鶴岡バイオサイエンスパーク内に、「日本ユニシス鶴岡インキュベーションラボ」という共同研究施設を設置するといった取り組みも行っている。

日本郵便と協業したビジネスエコシステムを提供

 既にビジネスエコシステムを形成した事例も出てきている。日本郵便の保管倉庫と宅配サービスを利用した、「収納サービスプラットフォーム」が好例だ。

 収納サービスプラットフォームは、サービス事業者が必要とする検品業務および発送管理の機能や、ウェブサイトに集客するためのプロモーションエンジンを実装。サービス事業者は保管や宅配サービス、ICTの仕組みが容易に利用できる。今年4月にはこのプラットフォームを利用して、クリーニングチェーンを運営する穂高が衣類の「ネット宅配&クリーニング保管」サービスを開始した。

 このプラットフォームは、マンション住居者向けの保管サービスをはじめとして、さまざまな業種での応用が可能だ。プラットフォームを利用する企業を増やして、エコシステムを拡大していきたいと考えている。

 スタートアップ企業の発掘も進んでいる。既に米Fellow Robots社のロボット技術と、日本ユニシスのAI技術を組み合わせた自律移動型ロボットを開発している。このロボットは店舗でお客様に、商品やサービスの提供場所を提示・案内する。在庫やお客様の応対などの情報を収集するといった、店舗従業員の作業支援も可能だ。2016年2月以降、ヤマダ電機の店舗で二度にわたる実証実験を実施した。

 複数の企業がお互いの強みを持ち寄ってエコシステムを形成すれば、1社だけでは実現できない成果が得られる。一緒にエコシステムをつくってアイデアを事業化したり、問題を解決したりすることで、互いのビジネスを広げていきたい。

出典:日経コンピュータ 特別レポート版
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