現金自動預け払い機(ATM)の画面に映し出されたQRコード。専用のスマートフォン(スマホ)アプリで読み取り、ATMで暗証番号などを打ち込むと、ほどなくして入出金トレイが開き1万円紙幣が出てきた。キャッシュカードは投入していないにもかかわらず──。

 全国のセブンイレブンなどにATMを設置しているセブン銀行と、KDDIと三菱東京UFJ銀行が共同出資で設立したネット専業のじぶん銀行は、2017年3月から「スマホATM」サービスを展開している。じぶん銀行の口座を持つ約242万人の預金者は、全国に約2万3000台あるセブン銀行のATMでキャッシュカードを使わずに現金の預け入れや引き出しができる。

セブン銀行のATMに映し出されたQRコードを、じぶん銀行のスマホアプリで読み取る。これだけでは操作者=預金者本人と断定できないので、ATMで暗証番号を入力する
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 「今までお金を引き出すときに必ず持っていたキャッシュカードを使わず、スマホだけでお金が出てくるというのは、自分自身で試してみても衝撃だった。唯一の弱点は、お金をしまうのに財布を取り出さないといけないことなのですが」。スマホATMを企画したじぶん銀行の中村力IT戦略部長はそう言って笑う。このサービスで大きな役割を担っているのがQRコードだ。

ATM画面のQRコードをじぶん銀行のスマホアプリで読み取る

 どのように使うのか、引き出しを例に見ていこう。スマホATMを使うには、まずじぶん銀行のスマホアプリにログインし、画面上で「引き出し」を選び金額を入力しておく。「引き出し額の入力画面には残高も表示するようにしている。自身の口座の残高を確かめて、そのまま同じ画面で引き出し額を入力できるほうが、ATMで引き出し額を入力してもらうより親切だと考えた」(じぶん銀行の中村部長)。

 そのうえでスマホを持ってセブン銀行のATMへ。ATMの待ち受け画面にある「スマートフォン 出金・入金」ボタンを押すとQRコードが表示されるので、じぶん銀行のアプリで読み取る。QRコードの主な情報はATMごとに固有の番号で、預金者がどのATMを使用しているのかがじぶん銀行側で把握できる。併せてQRコードを生成した時刻などのデータも加え、そのうえでデータ全体に難読化処理を施している。

 続いてATMの画面で、じぶん銀行の企業番号「8333」と4ケタの暗証番号を押す。暗証番号が確認されると、じぶん銀行からセブン銀行へ出金指示が行き、ATMから現金が出てくる。

 「キャッシュカードを使わずにお金が引き出せる」と聞くと、多くの預金者は「それは便利そうだ」と思うより先に「それは安全なのか」と心配に思うだろう。両社はそうした懸念を見越し、多段的なセキュリティを掛けている。例えば、QRコードの読み取りだけで出金指示を出さないのは、スマホを操作している人が預金者本人なのかどうか、それだけでは分からないからだ。「キャッシュカードをATMに投入しお金を引き出そうとする人は預金者本人と限らない」のと同じ論理である。

 スマホアプリ経由で口座情報、セブン銀行のATM経由で暗証番号と、経路と内容の異なる2つの情報をじぶん銀行の勘定系で突合することで、キャッシュカードと同等以上のセキュリティを担保している。スマホATMの共同開発にセブン銀行側の中心人物として携わった業務推進部の池田憲彦副部長は「ネットとリアルの認証を組み合わせることで預金者に安心してもらえるようにした」と明かす。

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