「日本にはまだチャンスがある。クラウドによって労働者一人当たりの生産性を高めれば、人口が8000万人に減ってもやっていける」――。日本オラクルで取締役会長を務める杉原博茂氏は2017年7月5日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)で講演し、労働生産性を高める手段としてのクラウドサービスについて解説した。

日本オラクル取締役会長の杉原博茂氏
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 同社は2015年、クラウドが生産性を向上させる原動力となる、との考えの下、クラウドを訴求するキーワードとして「POCO(The Power Of Cloud by Oracle)」を提唱した。2020年のビジョンに「日本を幸せにするクラウドカンパニー」を掲げる。クラウドの売上は、グローバルで前年比60%伸びて約5000億円。日本オラクルも前年比99%伸びて、国内のクラウドサービスの顧客は1000社を突破した。

 杉原氏は、クラウドがIT人材の人手不足を解消し、労働生産性を高める手段になる、と主張する。人材は2017年現在で22万人不足しており、2030年に60万人不足する。人口は2053年に1億人を割り、2065年には労働者が40%減る。「現状のまま人口が減り、生産性も改善しなかった場合、2040年以降はマイナス成長が定着してしまう」(杉原氏)。

 こうした中で、実質経済成長率を1.5~2%に保つためには、人口を1億人以上に維持するか、あるいは労働生産性を世界最高レベルへと引き上げるしかないと杉原氏は言う。「現在の労働者一人当たりのGDP(国内総生産)は、日本が3.9万ドルで、米国が5.7万ドル。2065年時点で米国並みの水準を達成していないとだめだ」(杉原氏)。

クラウドで日本の生産性を向上、地方創生にも注力

 杉原氏は講演の中盤で、日本のIT(情報技術)システムの現状を分析した。ユーザーが保有する伝統的なITシステムの場合、1年間に約14兆円を使っている。内訳は、ハードウエアが8600億円、コンサルティングが6000億円、ソフトウエアが1兆円、導入/構築サービスが4.7兆円、運用のアウトソースが3.6兆円、サポートが1.3兆円、ミドルウエアが6000億円、アプリケーションが1.2兆円となる。

 これに対して、パブリッククラウドの規模は現状で年間5000億円。2020年時点では、オンプレミスが約15兆円で、クラウドが約1兆円と予測されている。杉原氏はこれを受け、オンプレミスからクラウドへとITシステムを移行することによって、日本にはまだチャンスがあると主張。「百人力」という言葉を出し、「一人ができることを10倍100倍にすればいい」とした。

 クラウドに移行するメリットは大きいという。例えばTCO(運用などを含めた総所有コスト)を削減できる。アプリケーションを開発することなくすぐに使い始められる。他システムとの接続性や、機能や性能の拡張性が保たれている。データを分析する基盤も用意されている。セキュリティも高い。データ管理の面でガバナンスも効いている。

 クラウドを活用するユーザーを増やすに当たっては、地方創生に力を入れているという。「20~30代の男女の42%は、農村漁村への移住について関心があると答えている。クラウドなら地方でも使い始められる」とした。基幹業務の機能を提供するOracle ERP Cloudを中核に、マーケティングや営業支援、BI(ビジネスインテリジェンス)などの機能を連動させられる。

 実際に同社のクラウド型アプリケーションを活用している事例を二つ紹介した。一つは箱根に7店舗の旅館とホテルを運営する「一の湯」グループである。CRM(顧客関係管理)機能を提供するOracle Service Cloudを導入し、顧客の40%を占める外国人観光客に向けてサービス内容を向上させている。

 もう一つの事例は、うどんのチェーン店である「はなまるうどん」を経営するはなまるである。店舗の予算管理を一元化することによって生産性を向上させている。従来は店舗ごとのExcelシートを手作業で2週間かけて集約していたが、これを予算管理システムのOracle Planning and Budgeting Cloud Service(PBCS)で効率化した。

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