企業ネットワークに10年ぶりとなる大きな変革の兆しが訪れようとしている。Office 365に代表されるパブリッククラウドの急速な普及により、企業のIT基盤は抜本的な見直しを迫られている。これをチャンスとみた事業者やインテグレーターが「クラウド最適」をうたって積極攻勢を仕掛けている。その先兵となるのが「SD-WAN」。クラウドから端末まで、フラットにシンプルにつなぐ理想の企業ネットを目指した動きが今始まった。

 企業ネットワーク、それもWAN(拠点間をつなぐネットワーク)の領域で、今、にぎやかな議論を巻き起こしているキーワードがある。WANを仮想化する「SD-WAN」(Software Defined WAN)だ。

 SD-WANは海外発祥のキーワード。2015年ころから海外ベンダーが日本に上陸し、最近では国内の事業者やインテグレーターも参戦するなど、ここにきて急速に注目度が高まっている。その熱気を感じることができたのが、2017年4月19日に開催された「第二回 SD-WAN座談会」。業界関係者がボランティアベースで開催する勉強会といった趣旨の催しで、前回(2016年7月開催)のほぼ2倍となる130人超が参加した(図1)。大きな可能性を熱心に語る事業者がいれば、将来性に関する疑問を率直に投げかけるエンジニアもいたりして、喧々囂々(けんけんごうごう)の騒ぎとなった。

 関心はあるものの、実態がよく分からないといった状況は、ユーザー企業の意識にも見てとれる。日経コミュニケーションの連載コラム「ユーザー企業に聞きました」のアンケート調査で、読者モニターに「SD-WANに興味がありますか?」と尋ねたところ、「あまり知らず、興味がある」が最多で、全回答数のちょうど半数を占めた(図1の右)。

図1●関心高まるSD-WAN
2017年4月19日に開催された「第二回 SD-WAN座談会」(会場:NECネッツエスアイ)には前回のほぼ倍となる130人超が参加した(左)。日経コミュニケーションの読者モニター調査からは全体の約7割が「SD-WANに興味がある」と回答した(右)。
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騒ぎとなった▲
会場はNECネッツエスアイが提供。当日の議論は3時間近くにも及び、勉強会らしく国内外の最新動向が紹介されたほか、「SD-WANって所詮はリモートIPsec接続でしょ」といった新規性を問いかける発言や、「ウチのソリューションはSD-WANとは違う」といった定義にこだわる発言、「SD-WANは短命ではないか」と将来性を疑う意見も飛び出した。

SDN-WANから始める企業ネットの仮想化

 SD-WANを一言で言えば、「ソフトウエア的なアプローチだけで、WANの構築・運用・管理を可能にする仕組み」となる。この文脈ではSDN(Software Defined Network)から派生したWAN版となる。

 2011年ころに登場したSDNは、データセンター/クラウド事業者や通信事業者のネットワークを仮想化する手段として採用が進んだ。その後、SDNを商材としてかつぐ事業者やインテグレーターは企業ネットワークへの展開をもくろんだ。ただ現状では、期待したほどには普及していない。本誌読者モニター調査でもSDNの導入企業はわずか5.8%にとどまり、予定のない企業が68.2%もいる。企業は長らく、ネットワーク仮想化のメリットを見い出せないままでいた。

 それが変わる。背景にあるのは、企業のクラウドシフトがさらに加速していること。それにより、現在の企業ネットワークとの“不整合”が目立つようになってきた(後述)。

 特に、大企業を中心に、パブリッククラウドへの移行が目覚ましい。調査・コンサルティング会社のアイ・ティ・アール(ITR)の甲元宏明プリンシパル・アナリストは「クラウド活用を進める企業にとってパブリッククラウドが本丸になってきた」と明かす。日経コミュニケーションが毎年実施している「企業ネット/ICT利活用実態調査2016」の結果を見ても、パブリッククラウドの利用は順調に伸びている。特に、アプリケーションをネットワーク経由で利用するSaaS(Software as a Service)に至っては、5割の到達も見えてきた。

パブリッククラウド▲
IT資産をネットワーク越しに利用できるようにするサービス。SaaSやIaaS、PaaSがある。
5割の到達▲
「利用中」の企業が44.3%に達した。これに「利用予定」(3.9%)や「利用する方向で検討」(5.1%)を含めると53.3%になる。

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