ふじ観光企画 ICT事業部長の武田憲一氏は2017年6月13日、ICTの総合展である「Cloud Days 札幌 2017」(札幌コンベンションセンター)で中小企業でのICT活用をテーマに講演した。ふじ観光企画は北海道札幌市の企業で、エビやカニなどの食材を卸販売していた。武田氏はプロフェッショナル修斗の元格闘家で、30歳まで現役を続けた。無縁だったはずのICTに元格闘家が出会い、収益アップを実現するまでの経緯を明かした。

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ふじ観光企画の武田憲一ICT事業部長
写真:浅野久男

 武田氏は格闘家を引退した後、興行プロモーション事業に携わった。現役選手時代はパソコンを使えなかったが、選手の飛行機手配や海外の興行先との交渉など、さまざまな作業が同時進行する業務を効率的にこなすため、必要にかられて利用するようになったという。

 2009年に出身地の札幌で、ふじ観光企画に入社する。同社の中核事業は北海道食材の法人向け卸販売事業だったが、「販売単価が道内価格を超えられない」「法人相手で大きくなりがちな売掛金の未回収リスク」「営業マンに頼った属人的営業」といった課題を抱えており、解決策として武田氏が一般消費者向けのネット通販事業を立ち上げることになった。

 全国の消費者を相手にするネット通販では、販売単価を全国基準で決められる、個人相手で1件当たりの売掛金が小さい(=未回収リスクも小さい)、さらにユーザー自ら商品を探して購入するので営業担当者に頼らなくても商品をさばける――といった特徴があり、同社が抱える課題を解決できる新規事業だった。

 読み通りネット通販事業は順調に推移し、全国にエンドユーザーを獲得することに成功、法人事業の売上比率は下がった。しかし、水産加工品の食品売り上げだけに依存することのリスクを考えるようになる。

 どうすべきかを考えた結果、自社の通販事業を手掛けた経験を生かした、中小企業の通販サイト立ち上げのコンサルティングを始めた。一業種一社という条件で、各社の収益スキームに踏み込んでコンサルティングするのが特徴で、業種によって異なる収益のあり方を理解したうえでサポートするという。コンサルティング業務は同社の2本柱の一つともいえる主力事業に育っただけでなく、得られた異業種のノウハウをフィードバックし、社内で新しい取り組みを行うのにも役立っている。

 食品事業、ICTコンサルティング事業の2本柱が収益化を果たした後も、ふじ観光企画は3本目の柱を求めた。次に武田氏が取り組んだのが、食品事業で培った通販事業のノウハウを水平展開し、別の商材を扱う通販事業を手がけることだった。商材として選んだのはガチャガチャ(カプセルトイ)用おもちゃだ。

 現在、月間の商品発送件数が3000~5000件のECサイトを、担当スタッフ2人で運営できる体制を構築している。先行して手掛けた2本柱の事業ノウハウを活用し、全てを社内で運営できるようにしたことで、外注を使う場合に比べて3分の1程度のコストで済んでいるという。

 ふじ観光企画の新規事業はスムーズに進んできたわけではない。失敗もあれば、スキームができても現場で使われなかったといったこともあったという。実際のソリューション選びでは、選択肢が多くてどれを選べばいいのかが難しいこともある。

 こういった経験から、中小企業がICTを導入する際は、会社がどういう課題を抱えていて、どうすればクリアできるのかをしっかり考えたうえで行動するのが大事だと武田氏は指摘する。水産業、通販サイト立ち上げコンサルティング、おもちゃの通販事業と、同社が手がける3本柱は一見何のつながりもないようだが、時々の会社が抱える課題を整理し、ICTを活用して対応していったという点では共通している。