仮想現実をより現実に近づける基盤技術の開発競争が激しさを増している。数十台のデジカメを使う大規模な仕組みから、スマートフォン1台のものまで様々。スタートアップ企業が先行した市場を狙い、巨人マイクロソフトも動き出した。

 今回からはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を支える周辺技術を見ていく。まず取り上げるのは「3Dキャプチャー」と呼ぶ技術だ。現実世界を撮影した写真や動画を取り込んで3次元(3D)のVRコンテンツを作る技術や仕組みを指す。

 高品質のVR/ARコンテンツを作るうえで重要な基盤技術の1つだ。様々なVRコンテンツを体験したことがある読者なら分かるかもしれないが、既存のコンテンツのほとんどは最初からコンピュータグラフィックス(CG)を基にした「作りもの」。現実の世界の人間や建物、動植物などが見られるコンテンツは極めて少ない。非常にリアルなコンテンツであっても、ほとんどがCGである。CGでできたモノやキャラクターを作るにはユニティ(Unity)やアンリール(Unreal)といったゲーム開発ツールを使う。現在のVR/AR業界でゲーム業界出身の人材が重宝されているのはこのためだ。

消費者向け技術を転用

 これまでは研究開発にとどまっていた3Dキャプチャー技術だが、ここへきて米シリコンバレーのスタートアップ企業を中心に同技術の実用化に向けた動きが活発になってきた。

ライト・フィールド技術で撮影した写真の例。撮影後に写真の焦点を変更できる
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(出所:米ライトロ)

 いち早く3Dキャプチャー技術の開発に取り組んできたスタートアップの代表例が米Lytro(ライトロ)だ。同社が2014年4月に発表したデジカメ「Lytro ILLUM」を覚えている読者はいるだろうか。撮影後に写真の焦点を変えることができるデジカメとして、当時話題となった。発売当初は1600ドル(約18万円)だったが、現在の価格は約400ドル(約4万5000円)である。

 この機能を実現するために使っている技術を「ライト・フィールド(Light Field)」と呼ぶ。一般的なデジカメは内蔵したセンサーを使い光を平面的に捉える。これに対してライト・フィールド技術を使ったデジカメはレンズとセンサーの間に複数のマイクロレンズを挟み、光を複数の角度で多面的に捉える。大量のデータを処理する必要があるが、様々な角度から入ってくる光の情報を写真データに書き込むことで、後から焦点を変えられる。

 元々はコンシューマー向けのデジカメを開発していたライトロだが、同社のライト・フィールド技術が3Dの写真や動画を作ることに応用できると気付くのに時間はかからなかった。同社のジェイソン・ローゼンタール(Jason Rosenthal)CEO(最高経営責任者)は2016年4月、コンシューマー向けデジカメ市場から撤退して企業向けのVR技術や製品の開発に特化することを発表。その直後にライト・フィールド技術を使った本格的なVRカメラ「Lytro Cinema」を映画会社やTV番組制作会社向けに発売した。既に複数の映画会社と提携して撮影を進めていると噂される。作品はまだ発表されていないが、お披露目の時が楽しみだ。

ライトロが2016年4月に発表したLytro Cinemaの撮影風景
(出所:米ライトロ)
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