佳境を迎えた開発プロジェクトで問題が発生しました。一つは、ユーザー企業から追加要求が出てきたこと。もう一つは、要求を実現する際に専門性が高い技術に挑戦する必要性が判明したことです。これらに対処するため、ITベンダーA社の山田さんは追加のメンバーを出してもらえないか、本社に掛け合うことにしました。

 ユーザー企業の拠点にずっと常駐していた山田さんにとっては、久しぶりの本社の会議室。「緊張するな…」。思わず独り言を漏らしました。

 会議本番。気を取り直して社内の関係者に、人員追加の必要性を訴えました。しかし反応はいまひとつです。「追加要求、本当に対処する必要があるのか」「技術課題も、今の人員でもできるんじゃないの」と厳しい質問が続き、支援は難しそうな感触です。

 会議室を出ると、別のプロジェクトを担当する同期の鈴木さんと顔を合わせました。「今度増員してもらうことになった。何とか乗り切れそうだよ」。鈴木さんの話を聞いた山田さんは納得できません。「うちのプロジェクトの方が先進的なことにチャレンジしているし、顧客も責任感を持って参加してくれているのに」と悔しさで一杯です。

 仕事でプレゼンス(存在感)を発揮すると聞いて、真っ先に思い浮かぶ相手は、顧客企業でしょう。プレゼンテーションなどで提案を受け入れてもらうために、自分やチームメンバーの力量、専門性、熱意などを伝える必要性は、これまでお話ししてきた通りです。

 実は、仕事で大きな成果を出すためにプレゼンスを意識すべき相手は顧客企業だけではありません。社内の関係者にも意識する必要があります。

 顧客企業へのプレゼンスの重要性は理解できても、社内向けにもプレゼンスが大切という指摘には抵抗を感じるかもしれません。「自分は顧客企業のために懸命に働いている。そのことを味方である社内の関係者は理解していてほしい」と思う人もいるでしょう。

 確かに社内の関係者は味方ですが、逆に社内の関係者の立場で考えてみましょう。会社全体でどんなプロジェクトが走っていて、誰がどの顧客先で何をしているのか、何にチャレンジしていて、何に困っているのか…など、全ての状況を把握できている人はほとんどいないはずです。とすれば、よく知っているプロジェクトに共感し、肩入れしたくなるのも当然の心理と言えます。自分の力量や熱意を示すだけではなく、相手が共感するように働きかけることもプレゼンスでは重要です。

 お分かりの通り、人員の増強などの支援を適切に受けられれば、担当する顧客企業へのサービスにつながります。それを実現するためにも、社内でのプレゼンス向上は、プロのITエンジニアとして重要な仕事なのです。

事例共有会や報告会を生かす

 社内プレゼンス向上の具体策はいくつも考えられます。例えば、プロジェクトの状況を、様々な関係者に伝えておくことはその一つ。複数のプロジェクトを統括するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)、プロジェクト成功の鍵を握る中核技術に詳しいエキスパートなどと日々コミュニケーションを取っておきましょう。いざというときに、あなたやあなたのプロジェクトのことをよく知っているほど、適切に支援してくれるはずです。

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