長年システム開発に携わっていますが、現場によって環境も状況もさまざまで常に悩みながら仕事をしています。成功の秘訣ではないですが、活動の軸となる考え方や理念があれば教えて下さい。

(SIベンダー/ベテランSE)

 いつも心掛けているのが「信頼による協働こそが物事を動かす駆動力である」という考えです。人と人とが一緒に物事を成し遂げようと前進している現場では、信頼による協働が機能しています。逆にうまくいっていない現場ではこれが見当たりません。

 IT業界は他の業界よりも信頼による協働が難しい環境です。請負契約、開発と運用の線引きといった、対立関係を生みやすい構造があります。筆者はこうした環境でも信頼による協働を定着させたいと考え、日々活動しています。そのために3つのアプローチを現場で実践しています。(1)取り回しを軽く保つ、(2)出し惜しみをしない、(3)暗黙知を信じる、です。

 1つめの「取り回しを軽く保つ」はかつては難しいものでした。1台の導入で数億円かかるメインフレームでは、念入りに事業計画を立て、慎重に計画して組織を挙げて導入してきました。重量級のプロジェクトでは失敗が許されません。計画や成果物は徹底的に管理されます。成功を追求すればするほど取り回しは重くなる一方でした。

 現在はクラウド技術の進展で、ジャストインタイムで必要なものを必要なだけ作ればよい時代になりました。プロジェクトの軽量化が可能になったのです。軽さは力です。軽ければ失敗してもやり直せます。失敗から学べる組織はどんどん賢く、俊敏になっていきます。しかし、多くの日本企業の意識は変わらず、重量級プロジェクトの進め方の呪縛から逃れられずにいます。慣習を打破して取り回しを軽くするのが、今の日本企業が最優先ですべきことだと考えます。

 2つめの「出し惜しみをしない」は、企業というより有識者が積極的に意識する必要があります。一昔前は「飯の種である知識は他人に教えない」という態度が正しいあり方でした。しかし、現在のITでは「知識はオープンにして、サービスで商売する」というのが正しいスタンスだと考えています。

 オープンソースの潮流はIT業界の価値観を反転させました。知識を独占している人よりも、知識をオープンに公開し社会に貢献している人が尊敬され、お金も回る世の中になりました。「貢献はリスペクトを生み、リスペクトは協働を導く」。この考えが私の活動の中心にあります。

 3つめの「暗黙知を信じる」は、形式知(文書)主義からの脱却です。かつて、日本企業の成長の原動力は「皆で頑張る」でした。フラットな情報共有、専門分野を尊重した対等な意見交換、全員での取り組みにより、文書化されていなくても目標と情報を共有して前進できました。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経SYSTEMS」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)は12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら