ICTを平和目的に積極的に活用しようという動き「PeaceTech」。その推進者の1人である金野索一氏が、PeaceTechのキーパーソンに会い、その取り組みや思いを語ってもらう。(菊池 隆裕=日経BPイノベーションICT研究所)

 PeaceTechを体現している日本人経営者、3人目のゲストは河崎純真氏だ。13歳でプログラミングに目覚めて、15歳からエンジニアとして働き始め、いくつものITベンチャーで事業の立ち上げを経験。いつしかそうした場に飽き、50年続けられる仕事を模索した。そこで生まれたプロジェクトが「ギフテッド・エージェント」だった。

GIFTED AGENT CEOの河崎純真氏
(写真:GIFTED AGENT、以下同じ)
[画像のクリックで拡大表示]

発達障害の人たちに高度なプログラミング技術を教える学校

 東京・渋谷駅のほど近くに、その学校はある。ありふれたオフィスビル。その一角にあるドアを開けると、大きな畳の間が広がる。そして、ちゃぶ台のようなテーブルとクッションがいくつもある。窓際にはずらりと机が並んでいて、その上にはパソコンが置かれている。

 ここは2014年に河崎純真氏が趣味で始めたという教育機関だ。シェアハウスで週末だけメンバーが集まる。当初はそんな体裁でやってきたが、「本格的に学校を始めてみよう」と思ったのが2016年だった。

 この学校では、3DやVR(仮想現実感)、AR(拡張現実感)、あるいはデータサイエンスなど、ハイレベルなプログラミング技術を教えている。さらに、そこで育った優秀な人材をIT企業に紹介している。

 この場所には学力の高い生徒が集結している。たとえばIQ(知能指数)150の東京大学現役学生、TOEIC990点の慶應義塾大学卒業生、某教育系ベンチャーで働く早稲田大学卒業生などだ。実は彼ら彼女らは皆、発達障害だ。発達障害とは、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)の総称である。

 河崎氏にとっての原点は、母親だった。母親は、優秀なアニメーターであり、イラストレーターであり、有名な作品にも数多く携わったのだが、高機能自閉症という発達障害を患っている。

 「絵を描くことはものすごく得意だったわけですが、それ以外は全くダメでした。近所付き合いもできないし、家事もできない。そして人によくだまされる。それで一時期うちには多額の借金ができてしまったのです」(河崎氏、以下同じ)

 河崎氏はその原因を、優秀な障害者が社会の枠組みとマッチしないからだと考えた。

 そうした課題を解決するための学校が、ギフテッド・エージェントが運営するギフテッド・アカデミーだ。大人の発達障害者に特化した教育機関で、ミッションは「偏り(才能)を活かせる社会を創ること」である。

渋谷にある「ギフテッド・アカデミー」
[画像のクリックで拡大表示]

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら