「顧客ニーズの捉え方が狭い」と上司にダメ出しされた場合、表面的な顧客ニーズの背後にある真のニーズを見逃している可能性がある。顧客が本当に求めているものを見出すことで、成長性の高い新規事業を企画できる。

 「西部課長、本当にこんなキーワードの検索が必要なんでしょうか?」

 システム企画室の岸井雄介は、タブレットを使って検索結果を眺めながら、経営企画課長の西部和彦に聞いた。

 「高齢者見守りサービスの企画に参考になる事例を探すなら、以前に私がやったように『高齢者 見守り 一人暮らし』などのキーワードでウェブ検索すればいいんじゃないでしょうか。なぜ『親 心配 不安』という回りくどいキーワードでも検索する必要があるのですか?」

 「両者の結果はどう違う?」

 「最初のキーワードでは、ぴったりの結果が出てきました。ホームセキュリティ企業や携帯電話会社が提供する高齢者見守りサービスが多く並んでいます」

 「後のキーワードではどうか?」

 「こちらは…見守りサービスもありますが、認知症や筋力低下防止のための食事、運動に関するもの、高齢者のうつ病、孤独、介護、病院、薬など多岐に渡ります。はっきり言って見守りサービスには関係ないものが多く、参考にはならないですね」

 「そうかな?俺なら後の検索結果を使ってビジネスを大きくする企画を工夫するけどな」

 「課長、どういうことです?今検討すべきは一人暮らし高齢者の見守りサービスですよ」

 「これから説明するよ。そうすれば営業企画課長に『顧客ニーズの捉え方が狭い』と言われることはなくなるよ」

図 顧客ニーズの捉え方が狭い思考パターンの例
アンケート結果にとらわれ顧客ニーズを狭く捉える
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 岸井雄介は35歳。西日本の地方銀行A銀行に入社以来システム開発に従事し、現在はシステム企画室の課長補佐である。最近A銀行が買収したFinTech子会社F社の企画部と兼務になり、さらにグループ横断的検討プロジェクトのメンバーになった。

 西部和彦は37歳。A銀行でシステム企画の仕事を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。出向していたITコンサルティング会社から復帰し、多くの仕事を成功させた貢献が認められ、経営企画課長に昇進した。

 岸井は現在、商圏のビジネス活性化を目的とした「地域ビジネス創生」に向けたシステム企画を担当している。関西の地方銀行であるA行の商圏は、顧客の4割が郊外や山間などの非都市部に居住している。

 最近、非都市部で若い世帯が減り、高齢者だけの夫婦世帯や高齢者の一人暮らし世帯が増加傾向にある。今後高齢者の一人暮らし世帯はさらに増えると見込まれ、A行はそこに成長市場の芽があると考えていた。

 地域住民へのアンケートやインタビュー調査でも「一人暮らしの高齢者向け見守りサービスが欲しい」との強い顧客ニーズが表れていた。

 そこでA行は地域ビジネス創生の一環として、高齢者見守りサービスを企画することになった。地域の複数の企業が出資して見守りサービスを運営する会社を設立し、サービスを提供する。

 企画の詳細を検討する担当に指名されたのが、A行営業企画課の浜課長とシステム企画室の岸井であった。岸井は早速、ウェブ検索などで全国の類似事例を調査し、今後の進め方を考え、浜課長に説明した。だが、そこで手痛いダメ出しを受けることになった。

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