決済サービスApple Payとその周辺のモバイル決済事情について最新トレンドをまとめた近著(『決済の黒船 Apple Pay』)の後書きで、2006年に初めてNokia 770 Internet Tabletを見た衝撃に触れたが、初代iPhoneが2007年に登場してからの10年間は、まさに「インターネット+モバイル」の発展の歴史だったと言える。

 2000年代前半はNTTドコモのiモードやWAPなど、「携帯電話」という制約の中でインターネットの世界にどれだけ近付けるか試行錯誤が続いた時期だった。やがてモバイル機器は従来の「携帯電話」という枠を飛び越え、現在ではInstagramやSnapchatなどモバイルの世界で誕生したサービスがインターネットの世界を先導している状態だ。このちょうどトレンドの転換点の時期に登場したのがiPhoneということになる。

筆者の初代iPhone。米国でiPhone 4の発売日に機種変更を行うため行列に並んでいるところ
(撮影:鈴木淳也、以下同じ)
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不思議な会社、Apple

 Appleというのは不思議な会社で、トレンドの転換点にあたる節目節目に非常に重要な製品やサービスをよく投入してくる。パーソナルコンピュータブームの先駆けとなったApple II、GUIへの転換点となったMacintosh、携帯オーディオプレイヤーの世界を変化させたiPodとiTunes、スマートフォンの世界を広げて現在につながる利用スタイルを確立したiPhone、そして業界の沈滞ムードの中で突如出現したApple Payといった具合だ。Appleは先進的な企業という評価もあるが、筆者の視点ではトレンドリーダーではあるものの、むしろ温故知新で枯れた技術をうまく組み合わせてタイミングよく投入することに長けた企業だと見ている。

 例えば、iPodが登場した当時は既に安価なMP3オーディオプレイヤーが市場に溢れていたし、iPhone以前にはWindows MobileやBlackBerryというスマートフォン市場で実績のあるライバルが存在していた。だがAppleはiPodをユーザーインターフェース面から見直し、iTunes Storeという強力なエッセンスを加えることで“枯れた”市場を次の段階へと昇華させた。iPhoneも、当時はWindows MobileのスタイラスとBlackBerryのQWERTYキーボードが主流だったスマートフォンの世界に、指によるタッチ操作中心のインターフェースを持ち込んだ。

 初代iPhoneは静電容量式タッチパネルを採用していた。当時の技術では「静電容量式は正確な認識が行えず緻密な操作には向かない」として、Windows Mobileや一般的なタッチパネル液晶で採用されていた感圧式のほうがモバイル用途に向いていると考えられていた。だがiPhoneでは静電容量式でも違和感なく利用できるようインターフェースや操作感を改良し、さらに「マルチタッチジェスチャー」という今日では一般的な操作方法を編み出し、先駆者らとの差別化に成功した。その結果は、いま多くの方々が目にしている通りだ。

 「テクノロジー」という視点でみれば、決して他社から突出しているわけではない。だが、既に成熟あるいは衰退したと思われる市場や技術をピックアップし、メインストリームへと引き上げる手腕はAppleならではのものだ。これは今年2017年にも発表されるであろう、iPhone新製品でも生かされるのだろうか。

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