SCSKが健康経営に乗り出すきっかけとなったのは、2009年に同社の前身の1社である住商情報システムの社長に中井戸信英氏(現SCSK相談役)が就任したことだ。今でこそ健康経営の推進企業として知られるSCSKだが、当時は「社員たちが、昼休みに弁当も食べず机に突っ伏し、夜になるとタクシーが列を成す」(人事グループ ライフサポート推進室長の山口功氏)という状況。「IT企業は時間でなくインテリジェンスで勝負すべきなのに、時間を売り、健康を売っているだけだ。これではこの会社の未来はない」。中井戸氏は決意を固めた。

SCSK 人事グループ ライフサポート推進室長の山口功氏
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 残業削減は経営にとっても重要である──。そう認識していても気になるのが「1人月いくら」というIT業界の受託開発の典型的な費用体系だ。「残業を減らしたら受注額も減ってしまい、業績に影響してしまうのでは」。役員や社員のなかには、そう心配する声もあったというが、中井戸氏ら経営トップは「たとえ一時的に業績が下がるとしても、健康経営は我々が実現しなければならない通過点だ。業績は必ず後で付いてくる」と自ら退路を断った。

 具体的な施策として健康経営に取り組み始めたのは、本社移転や住商情報システムとCSKの経営統合を経た2012年度のことだ。同年夏には「残業半減」を全社で掲げ、翌2013年度からは年20日付与される有給休暇の100%取得も含め「スマートワークチャレンジ(スマチャレ)」と改称した。一連の取り組みを始める前の2009年度は、平均残業時間が35時間、有給休暇の取得日数は13日だった。これに対し同社は、平均残業時間20時間、有給休暇取得は20日、つまり年間に付与される有休休暇を100%取得することを目指した。

 もちろん、ただ「早く帰れ」「有休を取れ」というだけでは実効性に乏しい。そこで同社は、複数の施策を次々に打ち出し、全社を挙げて推進することで残業半減と有休取得100%へ突き進んだ。例えば「バックアップ休暇制度」。年休を使い切った社員が病気などやむを得ない事情で出勤できなくなっても、同制度を使うことで、減給対象となる「欠勤」にならずに済む。年度末に近い1~2月はインフルエンザの流行期でもあり、「もし年末年始までに年休を使い切ってしまうと、インフルエンザなどで休まざるを得なくなったときに困る」と懸念する社員がいると考えて設けた制度だ。2012年の制定当時は3日付与だったが、インフルエンザの発症から回復までの平均期間を踏まえ、現在は5日付与に拡充している。

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