「脳は、電力効率の点でノイマン型コンピュータより圧倒的に優れている。その部分は脳を模倣し、他は半導体技術での実現のしやすさを優先した」。

 東芝セミコンダクター&ストレージ社半導体研究開発センターの出口淳参事は、同社が2016年11月に学会で公表したAIチップ向け半導体回路技術「TDNN(time domain neural network)」(図1)の開発コンセプトをこう説明する。

図1●アナログ回路でAIチップを実現する技術「TDNN」の概略
(出所:東芝)
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 TDNNを使えば、デジタル回路を使う一般的なプロセッサに比べ、深層学習(ディープラーニング:多層のニューラルネットワークによる機械学習)の演算に伴う電力消費を半減できる見通しだ。TDNNとは、どのような技術なのか。

二つの潮流の中間を目指す

 AIチップの研究開発には、二つの異なる潮流がある。一つは第1回で紹介した、深層学習の演算を加速させる「深層学習アクセラレーター」を目指すものだ。

 もう一つは脳科学の知見に基づき、神経回路の働きを半導体で再現する「ニューロモーフィックチップ」を目指すもの。神経細胞のスパイク電位をデジタル回路で再現できる米IBMの「TrueNorth」がこれに当たる(関連記事:脱ノイマン型へ、IBM70年目の決断)。NECと東京大学が共同で開発するアナログ回路技術も、ニューロモーフィックチップの流れに乗るものだ(関連記事:NECと東大がAI研究で協定、脳を模した専用のアナログ回路を開発)。

 東芝によるTDNNの開発は、「深層学習アクセラレーター」と「ニューロモーフィックチップ」の中間に位置づけられる。

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