写真:Getty Images
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 パソコンとLANスイッチ、ネットワーク機器同士など、企業ネットワークで機器と機器をつなぐ役割を担うのが、LANケーブルだ。最近では、無線LANを使ってネットワークにつなぐ場合もあるが、アクセスポイントより先にはLANケーブルが使われている。ネットワークを構成する上で、LANケーブルは不可欠なのだ。

 しかし、LANケーブルが注目される機会は少ない。「ただつながればいい」と見られがちで、性能や品質をあまり気にしない。しかし、LANケーブルなら何でもよい、適当に配線しておけばいいと考えていると思わぬトラブルに発展する。LANケーブルを起因とするネットワークトラブルは非常に多いからだ。おろそかにすれば、重大なトラブルを引き起こす可能性がある重要なコンポーネントだと考え直す必要がある。

 本特集では、企業ネットワークで主流の金属の信号線を使ったメタリックケーブルの仕組みや種類、正しい使い方などをQ&A形式で見ていこう。これまで正しいと思っていた使い方に落とし穴が見つかるかもしれない。(齊藤 貴之)

Q LANケーブルってどうやって信号を送っているの?

A 2本の信号線を組みにして、2本の電圧の差で信号を送る

 企業ネットワークで使われるメタリックケーブルには、コードに8本の信号線が入っている図1)。2本の信号線をねじり合わせて組みにした「より対線」という構造を採る。8本の信号線は、プラグの八つの端子にそれぞれつながっている。

図 1 LANケーブルは4対の信号線で構成される
100BASE-TX以下では2対しか信号線を使わず、信号の流れが決まっている。1000BASE-T以上では4対とも使用し、一つの対の信号線に対して、互いに信号を送り合う。
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 信号のやり取りは、より対線単位だ。一方の信号線にプラスの電圧を、もう一方の信号線にマイナスの電圧をかけて、電位差(電圧の差)を使って信号を送る。この仕組みを「差動信号」という。

使わない信号線がある

 4組あるより対線のうち何組を使うかは、イーサネットの規格によって決まっている。

 例えば、最大データ転送速度100Mビット/秒の「100BASE-TX」や、現在ではほとんど使われなくなった最大10Mビット/秒の「10BASE-T」では、2組のより対線だけで通信する(図1上)。残りの2組は使わない。

 一方、最大1Gビット/秒の「1000BASE-T」や最大10Gビット/秒の「10GBASE-T」では4組すべてのより対線を使う(同下)。

 なお1000BASE-Tが普及する前には、より対線が2組しか入っていないLANケーブル製品も販売されていた。

同じ信号線で送受信する

 信号の送り方も異なる。10BASE-Tと100BASE-TXは、使用する2組のより対線の一方を送信に使い、もう一方を受信に使う(通信相手は逆に、受信用、送信用として使う)。1000BASE-Tや10GBASE-Tは、4組のより対線すべてを送受信に使う。

 このため10BASE-Tと100BASE-TXは、単純な回路で信号を取り出せる。一方、1000BASE-Tや10GBASE-Tには、送信と受信の信号を分離するためのハイブリッド回路という特殊な回路が必要になる。

ノイズを小さくする仕組み

 LANケーブルの「差動信号」と「より対線」は、ノイズを小さくするための工夫だ。

 差動信号は2本の信号線の電位差を使うので、送信中に2本の信号線に同じ信号の乱れが生じても、受信側で差分を取れば乱れを取り除ける。こうして、ノイズは小さくなる。

 もう一つのより対線の効果は、平行の対線と比較するとわかりやすい(図2)。外部からの電磁波によって磁力線が信号線を横切ると、誘導電流が生じる。平行の対線では、一方向に誘導電流が発生してノイズが発生しやすい。

図 2 より対線の“より”でケーブル外部からのノイズを軽減する
よったことで誘導電流が逆向きに発生し打ち消し合う。
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 一方、より対線では、信号線をねじっているので、磁力線に対して半回転する。このため、磁力線から受ける誘導電流の向きが、半回転するごとに逆向きに働いて、打ち消すようになる。こうして、電磁波からのノイズの影響を小さくできる。

▼コード
本特集では、ネットワーク機器やパソコンのコネクターに挿し込む、LANケーブルの挿し込み部分を「プラグ」、いわゆる線に当たる部分を「コード」と呼ぶ。

▼8本の信号線が入っている
初期のイーサネット10BASE5では、コードの中心に信号線があり、その周りに絶縁体、さらにその外側に網組みのシールドを入れた同軸ケーブルが使われていた。

▼差動信号

プラスマイナスの電位差を使う差動信号に対して、0V(グラウンド)を基準とした電圧を使う信号は「シングルエンド信号」という。

Q カテゴリー5eケーブルは10GBASE-Tで使える?

A 通信できるかもしれないが、エラーが発生して遅くなる恐れがある

 「カテゴリー」は、LANケーブルの品質を表す。米国規格協会(ANSI)が標準化した「ANSI/TIA-568」、国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)が策定した「ISO/IEC 11801」、日本工業規格(JIS)の「JIS X 5150」の三つの規格それぞれで、カテゴリーは規定されている。規定に細かい違いはあるが、内容として相反するものではない。

 企業ネットワークで使われるのは、「カテゴリー5」(Cat.5)「エンハンスドカテゴリー5」(Cat.5e)「カテゴリー6」(Cat.6)「オーグメンテッドカテゴリー6」(Cat.6A)「カテゴリー7」(Cat.7)である。カテゴリーに続く数字が大きいほうが品質が高く、さらに「エンハンスド」や「オーグメンテッド」と付くほうが無印より品質が高い。

 100BASE-TXや1000BASE-T、10GBASE-Tといったイーサネットの規格で、どのカテゴリーのLANケーブルを使えるかを指定している(図3)。10GBASE-Tでは、Cat.6以上のケーブルが指定されており、Cat.5e以下のケーブルは使えないことになっている。

図 3 ケーブルのカテゴリーと使用できるイーサネットの関係
ケーブルとイーサネットは、それぞれで別々に規格が決まっている。Cat.6は、1000BASE-Tでの使用を想定された規格で、10GBASE-Tの規格より早く登場していたが、ケーブル長を37m以下に制限すれば10GBASE-Tでも使える(通常は100mまで使える)。
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 Cat.5eケーブルで社内ネットワークを組んでいた企業が、ネットワーク機器を交換するタイミングで10GBASE-T対応の機器に切り替えるが、ケーブルは時間的、金銭的な制約があってそのままにするケースは十分にあり得る。ケーブルを敷設し直すまでの間、Cat.5eケーブルで10GBASE-Tを使ってしまおうと考えたくなる。しかしこれはやめたほうがよい。通信エラーが発生し、データの再送などでかえって遅くなってしまう可能性があるからだ。

カテゴリーごとに周波数が決まる

 カテゴリーの規格では、信号の伝送に使用する最大周波数を満たすために、コードの通信品質が決まっている。

 コードの品質を表す規格として規定しているのは、送信した信号が届くまでにどれだけ出力が減るかを表す「挿入損失」、コード内の別のより対線から受ける影響をどれくらい抑えるかを表す「近端漏話減衰量」(詳細は後述)、各信号線で信号が伝わる時間の差を表す「伝搬遅延時間差」などである。カテゴリーごとに規定している最大周波数は、Cat.5とCat.5eが100MHz、Cat.6が250MHz、Cat.6Aが500MHzである。一方、実際に使う周波数はイーサネットの規格ごとに変わる。100BASE-TXでは31.25MHz、1000BASE-Tでは62.5MHz、10GBASE-Tでは400MHzである

 10GBASE-Tの伝送周波数は400MHzのため、最大100MHzを想定したCat.5eの規定を大きく超える。だから、エラーが発生する可能性があるのだ。

400MHz手前で規定値を下回る

 では、Cat.5eケーブルで10GBASE-Tの周波数400MHzの通信を行うとどの程度ノイズが発生するのか。ケーブルメーカーの日本製線が行った実験結果を図4に示す。最大周波数を超えた近端漏話減衰量を測定した結果だ。

図 4 Cat.5eケーブルの近端漏話減衰量を500MHzまで測定
近端漏話減衰量とは、対になった信号線の2組が、互いに影響を受ける電磁波(近端漏話)をどれだけ抑えたかの量を示す。減衰量が大きいほうが、ケーブルの特性として良いといえる。周波数が上がる(通信速度が高くなる)と、電磁波による悪影響を受けやすい。測定は日本製線が行った。
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 ケーブルに対するノイズは、ケーブル外部から入ってくるもの、ケーブル内部で発生するものに分けられる。ケーブル外部からのノイズには、複数のケーブルを束ねることで別のケーブルから受けるエイリアンクロストークや、パソコンやネットワーク機器の電源部から発生する電磁波などがある。一方、ケーブル内部で発生するノイズは、別のより対線からの電磁波(漏話)によるものなどがある。

 周波数が大きくなると、漏話が大きくなる。さらに受信側の機器の近くでは、届く信号が減衰しているところに別のより対線からの漏話があるため、ノイズになりやすい。この機器に近い側で発生する漏話を「近端漏話」もしくは「NEXT」と呼ぶ。これが、通信エラーを引き起こす原因になる。

 図4では、Cat.5eケーブルとCat.6Aケーブルで、近端漏話を抑える量の規格値と実際の測定値を示した。抑える量が大きいほど品質が高く、信号にノイズが乗りにくいということになる。

 Cat.5eケーブルの測定値を見ると、250MHz以下までは40dB以上で安定的に推移している。しかし300MHzを超えたあたりで急速に数値が乱れ、400MHzの手前でCat.6Aの規格値を下回った。規格値を下回ればすぐに通信エラーが発生するわけではないが、オーバースペックでの使用はやめたほうがよいだろう。

▼ANSI
American National Standards Instituteの略。

▼TIA
Telecommunication Industries Associationの略。米国電気通信工業会と訳される。

▼ISO
International Organization for Standardizationの略。

▼IEC
International Electrotechnical Commissionの略。

▼JIS
Japanese Industrial Standardsの略。

▼JIS X 5150
ISO/IEC 11801を翻訳して作られたものがベースになっていて、ほぼ同等と考えてよい。

▼Cat.5
カテゴリーの略し方は、特に決まっていないが、Cat.X(Xには数値や「5e」「6A」が入る)以外に「CAT X」「CAT-X」と略される場合が多い。いずれも「カテ」と読む。

▼10GBASE-Tでは400MHzである
400MHzは、Cat.6の最大周波数を超えているが、使用できるケーブル長を制限(37m以内、単線使用なら55m)して使えるとしている。

Q コードの構造は決まってるの?

A 規格でシールドあり/なしの指定はあるが、ほかは決まっていない

 コードは、シールドを備えていないUTPと備えているSTPに分けられる。シールドはノイズを吸収し、プラグをつなぐ機器などから外部に流すためのものだ。規格では、Cat.7はSTPを、Cat.6A以下はSTPかUTPを使うことになっている。これ以外の構造は定めていない。メーカーそれぞれが工夫して製品化しているが、かなり構造が似ている部分もある。

 図5では、UTPのCat.5e、Cat.6、Cat.6Aと、STPのCat.6A、Cat.7を比較するために、被膜を切り取った写真を示した。

図 5 LANケーブルの一例
各カテゴリーの規格では、UTP(シールドなし)、STP(シールド付き)以外の構造を定めていない。メーカーが自由に決められる。Cat.7ケーブルはスイスR&M製。そのほかは、日本製線製。
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 UTPのCat.5eは、ケーブル内でより対線が密着しにくいようにゆったりめの構造にして漏話の影響を小さくしている。Cat.6では、ケーブルの中に十字の仕切りを入れて、より対線同士がさらに密着しにくい構造にしている。Cat.6Aでも同じで、多くのメーカーの製品が十字の仕切りを入れている。

 Cat.6Aには、UTPにもかかわらず被膜の内側に金属製の遮蔽テープを巻いているものが多い。シールドではなく、別のケーブルからのノイズ(エイリアンクロストーク)を受けにくくするためだ。Cat.6Aの規格の品質を実現するために入れている。「遮蔽テープを使っていない製品もあるが、テープを使わないとケーブルの径は0.5mmから1mm程度太くなる」(日本製線 開発部 Managerの浅香 芳晴氏)。

 STPのCat.6Aでは、被膜の内側にホイル状のシールドが入っている。一方、Cat.7は各より対線をホイル状のシールドで包んだ上に、網状の金属でケーブルを包むことによって、さらにノイズへの影響を受けにくくしている。

▼UTP
Unshielded Twist Pairの略。

▼STP
Shielded Twist Pair の略。

Q ケーブルはどうやって束ねればいい?

A 結束テープがベスト。さらにきつくするときはテープとバンドを併用する

 LANケーブルを敷設するとき、まとまった量のケーブルを同じ方向に引くときは、テープなどでまとめておきたい。アクシオ IT基盤事業部 施工監理部 主査の別府 正寿氏は、「マジックテープタイプの結束テープを使うのが一番」と話す。必要な長さに切って使用できる(図6)。

 きつく締められる結束バンドはコード内の仕切りを破壊したり、信号線同士を密着させたりするのでお薦めできない。「どうしても使いたいなら、被膜にバンドの跡が残らない程度の強さにする。試しに一度締めた後に切り取り、確認するとよい」(別府氏)。「結束テープを巻いた上に結束バンドで固定するとケーブルのダメージは減らせる」(日本製線の浅香氏)という。

図6 ケーブルを束ねる方法
ケーブルの引き回しなどでケーブルを束ねたいときは、なるべく結束テープを使う。100円程度で購入できる細い結束バンドを使うと、ケーブル内で信号線が片寄ったり、切れたりしてトラブルの元になる。もしきつく束ねたいときは、結束テープを巻いてから結束バンドで縛るとケーブルへのダメージを軽減できる。
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Q フラットケーブルってどんなときに使うの?

A 床下や壁内をどうしても通せないときにドア下の隙間などに使う

 LANケーブルの中には、コードが平たい製品もある(図7)。ドアの隙間やカーペットの下などに使いやすい。ただし、使用には注意が必要だ。NTTコミュニケーションズ ソリューションサービス部 第二プロジェクトマネジメント部門 第三グループ 担当課長の上村 郁應氏は、「カーペット下で断線を起こした現場があった」という。「荷物を載せた台車が通る場所だったのが原因ではないか」と推測している。荷重が大きくかかる箇所には避けたほうがよい。

図 7 フラットタイプのLANケーブル
ドアの隙間などを通すために使うフラットタイプのケーブル。耐荷重性能が低い製品もあり、特に重い物が通過するような場所に使うと、ケーブル内断線を引き起こしやすい。
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Q ツメが折れたプラグのケーブルを使い続けていい?

A 問題はないが、基幹配線は影響が大きいので交換しよう

 LANケーブルのプラグは、コネクターの端子とプラグの端子がバネ状に接するようになっている。プラグのツメは単なる抜け防止なので、機器が動いたり、引っ張る方向に力がかかったりしなければツメが折れても使用できる。

 ただし基幹配線などで使っているケーブルでは、偶然でも抜けてしまうような事態が発生すれば、影響の範囲が大きい。アクシオの別府氏は、「構造上は問題ないが、基幹に近い部分では即時に交換し、壁内などではこういった事態を想定して予備の配線もしておくとよい」と説明する。

PoEの使用時には注意が必要

 「PoEを使っているときは、ツメが折れたケーブルの継続使用には注意が必要」というのは、日本製線の浅香氏だ。PoEは、LANケーブルを通じて、接続した機器に電力を供給する仕組み。通常のPoEでは最大15.4W、拡張したPoE Plusでは最大30Wを供給できる。

 プラグの端子は、コネクターの端子と常に触れる箇所(通常時の接点)と、端子同士が接近してスパーク(火花)が発生しやすい箇所が離れるように設計されている。スパークが発生すると、まれに端子上に「クレーター」と呼ばれる焦げ跡が付くからだ(図8)。特に、PoEを使っていると電力が大きいため、クレーターが発生しやすい。

図8 ツメが折れていると通信エラーを引き起こす恐れがある
電流量が大きいPoEでは、スパークが発生しやすくクレーター状の焦げ跡ができる場合がある。クレーター部分は抵抗値が異なるため、信号にノイズが乗りやすい。
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 クレーターのある場所とない場所では抵抗値が異なるため、高周波数の信号をやり取りするときは、ノイズが乗りやすくなる。ツメが折れたケーブルでは、プラグとコネクターの位置が固定されにくいため、クレーター部分が接点になりやすい。PoEの使用時には、ツメの折れたケーブルを使わないほうがよい。

▼PoE
Power of Ethernetの略。

▼焦げ跡が付く
写真のクレーターは、見やすくするための特殊な条件下でできたもの。実際のLAN環境では、もう少し軽微なものになる。

Q ケーブルはやっぱり自作のほうがよい?

A テスターで品質を確認できるならよい

 LANケーブルは、コードとプラグを用意して圧着工具があれば、施工場所にぴったりの長さのものを作成できる。ケーブルは短ければ短いほど信号の減衰量を抑えられる。自作したほうがよいのだろうか。

 ケーブル敷設に携わるアクシオの別府氏とNTTコミュニケーションズの上村氏はどちらも、メーカー製の完成品ケーブルを使うべきだという。二人とも、過去に自作ケーブルの品質が原因のトラブルに遭遇したことがあるという。誤った方法で作成されていたり、圧着が弱かったりしたために、断線や品質の低い状態で使われていたためだった。

 上村氏は、「すべてがダメというわけではない。経験を積んだ人が作成し、作成後はケーブルテスターを使って品質を確認すべき」と話す。ケーブルテスターには、導通だけを測る製品と品質を測る製品がある(図9)。品質まで測定しておけば、トラブルに発展するケースは防げるだろう。

図 9 ケーブルテスターの種類
自作ケーブルを使用するときは、テスターで導通や品質を確認する。
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 なお、ケーブルテスターによる品質測定には注意が必要だ。テスターの測定結果は、両端のプラグで発生するノイズが取り除かれて表示されるからだ。これは、テスター側の問題ではなく、ケーブルの規格がそうなっているためだ(図10)。

図 10 ケーブルの仕様で規定するチャネルとは機器側のコネクターの手前まで
ケーブルの規格は「チャネル」で品質を規定している。仕様書の「JIS X 5150」では、チャネルを「ネットワーク機器と端末との伝送経路」としていて、両端のプラグ部分の性能は問われていない。そのため、テスターもプラグ部分で発生したノイズを無視する設計になっている。
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 ケーブルの規格では、「ネットワーク機器と端末の伝送経路」を対象としていて、ケーブルと機器をつなぐプラグ部分を対象にしていない。このため、ほとんどのテスターがプラグで発生するノイズを除去する機能を搭載していて、わざわざ測定値からノイズを差し引いて表示する。規格の対象範囲が見直される動きもあり、規格が変更になればプラグ部分のノイズも測定できるようになるだろう。

Q シールド付きケーブルはアースしないと意味がない?

A アースしなくてもシールドの効果はあるが限定的

 シールド付きのSTPケーブルとシールドがないUTPケーブルを比較した場合、シールドがあるSTPケーブルのほうがノイズに強い。しかし、それはアース(接地)した場合だ。LANケーブルのシールドは、ネットワーク機器やパッチパネルなどをビルの接地ポイントなどにつないで外部からのノイズを流す。こうして信号への悪影響を抑える仕組みになっている。

 実際、電子情報技術産業協会(JEITA)の情報配線システム標準化委員会が実施した耐ノイズ性能の実験では、ケーブル外部からノイズを与えたところ、接地していないSTPケーブルでは通信エラー(パケットロス)が発生した(図11)。ただ、同じ環境でUTPケーブルを使った結果と比較すると、UTPケーブルのパケットロスのほうが接地していないSTPケーブルより多くなった。接地しなくてもシールドの効果があるように見える。ただし、限定的だ。

図 11 UTPと接地しないSTP、接地したSTPで耐ノイズ性能を測った実験結果
ケーブルに大きなノイズを与えて、通信データにどれだけ悪影響があるかを測った。1000BASE-Tで1億パケットを送り、パケットロスの個数を比較した。JEITAによる実験結果。
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 なおSTPケーブル使用時に、やみくもな接地は禁物だ。「場所を考えずにアースすれば、かえって悪くなる」(アクシオの別府氏)と指摘する声がある。例えば、各機器で接地する場所が異なり、場所によって電圧の差が生じていると「シールドの中を電気が通るようになり、ノイズを発生させてしまう」(別府氏)という。ビルによっては系統が異なる接地ポイントが用意され、同じ電圧になっていないケースもある。なるべく同じ系統につなぐようにしよう。

▼JEITA
Japan Electronics and Information Technology Industries Associationの略。

▼見つかっている
最近になって、問題になったケースもある。2000年代に100BASE-TXに切り替えたときは問題がなかったが、ここ数年の間にネットワーク機器を更新したところ、95年規定のCat.5ケーブルで使えなかったというケースだ。2000年代のネットワーク機器は、95年規定のCat.5ケーブルが使えるようにマージンがあったが、新しい機器はCat.5e以降を前提に設計されているのではないかと原因を推測する声がある。

Cat.5の規格は2種類ある

 Cat.5は、規定したISO/IEC 11801(JIS X 5150)の改定で仕様が変わった。当初策定された1995年(JISは1996年)の仕様と改定後の1999年(JISは2000年)の仕様の2種類が存在する。2002年にも改定されたが、その仕様はCat.5eと名称が変わった。現在販売されているCat.5ケーブルはほとんどがCat.5eケーブルである。

 イーサネットの主流は、2000年ごろ10BASE-Tから100BASE-TXに切り替わった。そのときわずかだが、95年仕様のCat.5ケーブルで100BASE-TXが使えない事例が見つかっている。

Q カテゴリー7準拠って何が違うの?

A 採用しているプラグが違う

 家電量販店などで販売されるLANケーブル製品の中には、「CAT7」や「category7」と表示があるのに、Cat.7に対応していない製品がある(図12)。Cat.7のプラグは規格で「GG45」や「TERAテラ」と決まっているが、Cat.5eやCat.6Aと同じ「RJ-45」というプラグを採用しているからだ。

 該当製品を出荷するバッファローは、「GG45を使える機器が少ないため、ユーザーの利便性を考えてRJ-45を採用している。Cat.7相当の通信性能を持つ『Cat.7準拠』として出荷している」(同社広報担当の浜岡はまおか 航平こうへい氏)と説明する。

図 12 RJ-45を採用したカテゴリー7として販売される製品
パッケージには、カテゴリー7を示す「CAT7」や「category7」と表示があるが、ここに示す3製品とも規格では認められていないRJ-45ジャックが採用されている。
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Cat.7のコードは細い

 配管スペースにLANケーブルを通そうとしたが狭くて通せなかった。そのため、当初予定していたCat.6AからCat.7に変更した。インテグレーターからこんな話を聞いた。そこで、ケーブルメーカーである日本製線の浅香氏に聞いた。

 「国内の主なケーブルメーカーが出荷するCat.6Aのコード径は7.5mmが多い。一方、Cat.7ケーブルにはコード径が7.2mmとCat.6Aより若干細いものがある」という。国内で流通するCat.7ケーブルは海外メーカー製であり、国内メーカー製のものがない。海外メーカーのケーブルは、Cat.7に限らず、径が細いため、このような状況が起こっているようだ。

出典:日経NETWORK 2016年11月号 pp.44-53
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。