中古車や中古衣料品は同じモノでも条件次第で価格が異なる商品の代表例だ。品目数は膨大なうえに、値付けの条件が複雑なためその作業は煩雑極まりない。人が苦労していた中古品の査定にまでAIが入り込んでいる。

 リクルートマーケティングパートナーズはAIを活用した中古車販売支援システム「D-MATCH」を運営している。中古車情報サイト「カーセンサーnet」に掲載・蓄積された約170万件の販売データを基に、中古車販売店の経営を支援するサービスだ。

 「中小販売店は勘と経験の世界で商売をしている。一方、大手専業店は経営合理化が進む。中小を支援して差を縮めなければ市場全体の健全な発展を望めない」。同社自動車事業本部メディアプロデュース統括部の嶋村亜海氏はサービスの狙いを説明する。

 中古品市場はもともと条件によって「一物多価」になる性質を持つ。特に自動車は品目数が膨大だ。例えばスマートフォンのiPhoneなら、iPhone 8やXなどのほか色やストレージ容量のラインアップを含めても数十種類程度。一方、乗用車はトヨタ自動車の製品だけで約400モデルある。色やオプションの違いでさらに種類は増える。年式や走行距離数、事故歴なども価格に影響する。カーセンサーnetはこうした多種の中古車の販売実績情報を200万件以上蓄積している。

中古車市場をAIで攻略

 これを「中古車(車種、価格、年式、型式、走行距離など)」、「店舗(口コミ、業態、地域など)」および「その他(相場との差、需給バランス)」などの3つの切り口で、10種類以上の変数を設定。機械学習で予測モデルを作成した。

多種多様なデータから成約率を推定
図 リクルートマーケティングパートナーズの中古車販売支援AI「D-MATCH」の仕組み(画像提供:リクルートマーケティングパートナーズ)
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 予測モデルに車の各種情報を与えると、その車の「予測成約率(販売店が該当車をカーセンサーnetに掲載した場合、1カ月以内に売れる確率)」をはじき出す。経験と勘ではなく、過去の膨大な取引から導き出したデータであるため、おおむね72パーセントの予測精度を実現しているという。

 販売店はこれを見て、「予測成約率が80パーセントもあるなら仕入れよう」といった判断をする。価格自体をAIが算出するわけではないが、直近の自動車オークションなどの平均価格を参考価格として表示する機能がある。成約率が高い中古車に絞って仕入れることで、在庫負担を軽減できる。

 開発を担当したリクルートテクノロジーズのITソリューション統括部に所属する北條健太氏は、様々な変数を組み合わせて予測モデルを作成したと説明する。「中古車のスペックは重要だが、店舗情報も成約率を大きく左右する」という。単に安くて良質なだけでは売れない。輸送費が上乗せされるため、成約率は販売店の地域性に依存する部分が大きい。さらに販売店の口コミも成約率を左右する。

 D-MATCHを使いこなしている販売店からは「最高益を更新した」といった声も上がるという。一方、「予測成約率よりも、明日何を仕入れるべきかを示してほしい」といった声も寄せられる。D-MATCHは過去の実績に基づく成約率を出すだけ。実際に仕入れる場合は、販売店の周辺に該当車種を欲しがる人がいるかどうかなど、人の判断を加味せざるを得ない。「AIは万能ではない。AIは支援に徹して最後は人が判断するという使い方が、リクルートグループ共通のAI活用法」(北條氏)との考え方で開発を進める。

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