スタジアムや航空機の座席は場所や購入のタイミングにより価格が異なることがある。この価格決定プロセスにAIを取り入れ磨きをかける動きが出てきた。その時々の適正価格、いわば「時価」が売り上げを最大化し、顧客満足度を高める。

 プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスを運営する楽天野球団は2017年シーズンから、本拠地「Koboパーク宮城(現楽天生命パーク宮城)」で開催する主催試合で入場券の変動価格制を導入した。他球団が実験した例はあるものの、国内の球団が本格導入するのは初めてだ。

観客数が15万人増

 シーズン前の1月の段階で席種ごとに5種類前後の価格カテゴリーを設定。併せて前年の入場者数実績や曜日、対戦相手などを参考に、試合ごとに発売時の価格カテゴリーを決めた。

 2月から販売が始まると、開催日と席種ごとに予想した売れ行きに対する実売状況が見えてくる。それを踏まえ、早々に売り切れそうな席種は販売期間の途中でカテゴリーを引き上げ、空席が多くなりそうな席種は引き下げる。

空席の多い試合・席種へ観客が分散
図 楽天イーグルスが2017年の公式戦で実施した価格変動制のイメージ ※注:開催日・席種・料金は実際のものとは異なる
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 2016年シーズンまでは全席種に単一のカテゴリーを適用し、発売後は価格を変えなかった。2017年シーズンは変動価格制により、相対的に割高な日から割安な日へ、割高な席種から割安な席種へと需要の分散を図った。

 「増収が目的ではない」。変動価格制導入の指揮を執った楽天野球団事業本部の大石幸潔本部長は明かす。「2016年までは、多くの人が買いたいと思った人気カードの席種が試合の1週間前に売り切れることがしばしばあった。人気の試合・席種を少し値上げして需要を調整し、様々な席種を試合直前まで買える環境を整えたかった」。

 大石本部長の狙いは的中した。2017年はKoboパークでの公式戦主催試合が66試合あった。うち38試合について、席種数で全体の約30%の価格を販売期間中に変えた結果、2016年は累計162万人だったシーズン観客数が2017年は177万人まで増え過去最高を記録。ほぼ全試合で満席に近い状態を維持した。

 「多くの観客に見てもらえたのは、チーム成績が良かったこともさることながら、変動価格制の効果が大きい」。大石本部長は胸を張る。一方で課題も感じている。変動価格制の導入に際し、球団は旧来の販売管理システムを継続利用。価格改定の判断や残席数の移し替えは手動で処理したが「変動価格制をきめ細かく展開するには実売状況の機械学習が必要だ」という。

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